科学的な経営と人の心を重視する経営は両立する

――ご著書を読むとアメーバ経営という仕組みが実に理にかなっていて、非常に合理的な経営システムだと感じます。このように科学的な物の考え方をされていらっしゃる一方で、人の心や利他の心のように精神的なものも非常に大事にされておられる。この二つは、ご自身の中では矛盾していないわけですね。

 まったく矛盾していません。科学的な経営とは人の心をないがしろにすることではありません。

 アメーバ経営も人の心を大事にするということがベースにありますが、加えて人を育てたいという思いが発端にありました。私は経営者として一生懸命頑張ってきましたけれども、やはり一人では限りがあります。だから私と同じような経営をしてくれるパートナーを養成したいと考えたのです。そうした人が複数いれば会社はもっとうまくいくはずだと思ったのですね。孫悟空のように体の毛を抜いてぷっと吹いたら自分の分身が何人もできるみたいなことができればいいのにと真剣に考えて、自分の分身、つまり一緒に経営を考え、悩み苦しんでくれるパートナーをどう育てればいいかと思い悩んでいました。

 その時にパートナーシップを結んだ企業経営みたいなことができないかと考えました。会社全体の経営ができる人材を育成することは簡単ではありませんが、会社を小さな部門に分け、その小さな部門を経営していく人ならすぐにでも育成が可能だったからです。

 その時はまだセラミックスだけをつくっていました。セラミックスというのは金属酸化物が主で、その粉体を買ってきて大きなミルで微粉砕して原料をつくり、その原料を成形し、高温で焼いて製品にするという工程をたどります。当時はそれをすべて私が管理していたのですが、その工程を分割できないかと思いました。そのヒントになったのが京都の清水焼でした。

 京都の清水坂には清水焼の焼き物屋さんが軒を連ねていますが、すべてを内製しているわけではなく、大半は長石と粘土を混ぜた原料を専門のメーカーから買い、自分のところで轆轤で形をつくっておられるのです。伝統ある清水焼もそうしたやり方でつくられているわけですから、セラミックスも原料をつくる部門を切り離して独立させてもいいのではないかと思いついたのです。

 清水焼の焼き物屋さんをさらによく調べてみますと、自分では窯を持たず、専門の窯屋さんに焼いてもらっている工房もありました。それならば、セラミックスの工程ももっと分業できるだろうと思いました。まず原料だけを製造する部門をつくって責任者を置き、その部門を経営させるようにしました。できた原料は隣にある成形する部門に売る。成形する部門はつくったものを焼く部門に売る。焼く部門は焼き上がったものを次の仕上げの工程に売るというように、製造の流れ全体を、それぞれ別会社みたいにして切り分けていったのです。