「いまさら羽田国際化というならば、うちの成田の発着枠をすべて羽田に変えてもらいたい」
これが成田から国際線を飛ばしている欧米大手航空会社の本音だ。10月末に行なわれた日米の航空当局間協議は、米国側の怒りを買い、もの別れに終わった。
米系大手らはかつて成田を国際空港として開港した際に羽田から拠点を移転させられたいきさつがあるだけに、「羽田国際化など何をいまさら」(米系航空会社幹部)。成田に機能を集約している欧米系にとって羽田に路線を張るのは、羽田にもベースを持つ日系勢とは事情が異なり、コストアップ要因となる。
加えて、欧米路線が羽田に就航できるのは深夜早朝時間帯に限るという条件での就航要請が、米国側の怒りを爆発させた。
時間帯制限は「国際線における羽田は成田の補完という位置づけ」とする方針を国土交通省が貫き、成田が閉じている時間にしか羽田の長距離国際線運航を認めないため。中途半端な羽田国際化は日本のエゴ以外の何物でもないと欧米は主張する。
羽田は、滑走路が増設される2010年に、昼間に年3万回、深夜早朝3万回の国際線就航が計画されており、昼間の枠は近隣のアジア都市で埋まっている。
そんななかで、就航範囲撤廃を含む昼間のさらなる国際線枠拡大を目指す政府の規制改革会議。10月末の公開討論で「5万回、6万回の可能性もある」という言質を国交省の前田隆平航空局長から引き出した。しかし、実現に向けて現政権がどこまで尽力するかは未知数。
10年に拡張される成田、羽田を有効活用し、日本をアジアのゲートウェイにするという国策は、政治と経済が混乱するなかで外圧も加わり、絵に描いた餅に終わる危険をはらんでいる。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 臼井真粧美 )