14日に閉幕した今年の中国の全国人民代表大会(全人代)は、世界第2位の経済大国の座を目前にしながら、依然、発展途上国にだけ許される通貨管理を続け、大国としての責任を果たそうとしない中国政府の「人民元」を巡るエゴイズムを剥き出しにした。

 これに収まらないのは米国だ。オバマ大統領が全人代開催中の11日の演説で、中国に「市場に合致した為替率設定」を迫ったのに続き、連邦議会からも15日、超党派の議員130人が連名で米政府に書簡を送り、為替切り上げ圧力を中国に加えるように迫ったという。

 日本にとっても、こうした動きは決して他人事でない。人民元が中国経済の実力以上に低く設定されていれば、日本からの中国向け輸出が難しくなるだけでなく、日本の労働者の給与への賃下げ圧力や日本経済のデフレ圧力となるからだ。

 同じアジアの隣国に対して、米国型の恫喝を単純に真似することは賢明な対策と思えない。しかし、事なかれ主義で放置するのはもっと愚かな行為である。ここは、中国政府が自ら経済大国の責任を自覚して行動するよう促すことが重要だ。特に、国内では経済無策の評価が定着しつつある鳩山由紀夫政権にとって、経済外交は喫緊の課題のはずである。

「8%成長の維持」方針は
日本の輸出産業には歓迎

 「中国の国会」と称されるのが、全人代だ。『現代用語の基礎知識』(自由国民社、2010年版)のように、「中国共産党の政策に、国家の政策というお墨付きを与えるゴム判会議と厳しく批判する向きがある」と今なお、厳しく指摘する向きが存在するのは事実である。

 とはいえ、過小評価は禁物だろう。中国憲法57条は、全人代を「最高の国家権力機関」と規定しているうえ、全人代は年に1回、それも半月前後の会期でしか開催されない希少な儀式だからである。

 例年通り、全人代で中国政府が行う活動報告を、実質的な施政方針と受け止めて、その内容を注意深く吟味すべきことには変わりないはずだ。

 そこで、今年の政府活動報告だが、新聞報道にもあったように、(1)内需を中心に年8%の高成長を維持する、(2)都市部と農村の格差と、貧富の格差をそれぞれ是正し、農村の消費を刺激する、(3)積極的な財政政策と適度の金融緩和を継続、(4)消費者物価の上昇を3%程度に抑える、(5)人民元レートの安定を保つ、(6)戸籍制度改革を推進――などの点がポイントだった。