突然の人民元切り下げの実態は
なりふり構わぬ輸出テコ入れ策

 8月11日、突然、中国人民銀行は2%近い人民元の切り下げに踏み切った。その後13日まで3日連続で切り下げ、その間の下落幅は4.5%に達した。

 今回の措置は、表向きIMF(国際通貨基金)の勧告に従った人民元改革と称しているものの、実際には、中国政府の輸出のてこ入れを狙った景気刺激策の一環と見る。

 足元の中国経済の減速感は、ここへきて一段と鮮明化している。中国国内では、生産能力の過剰感が高まっており、企業間の取引価格の水準を示す今年7月の卸売物価指数は、前年同月比マイナス5.4%と3年5ヵ月連続で下落した。

 そうした経済低迷に危機感を持つ同国政府は、これまでにも金利の引き下げやインフラ基金の創設など矢継ぎ早に手を打っているものの、不動産バブルや債務の積み上がりなどの問題があり、期待したほどの効果が上がっていない。

 それに加えて7月の同国の輸出が前年同月比でマイナス8.3%と大幅に落ち込んだことを受けて、中国政府がなりふり構わず人民元の為替レートを切り下げたというのが実態だろう。

 実質的な通貨切り下げを、人民元改革の一部と説明することで相応の体面を保つことを考えたと見られる。

 世界最大の貿易黒字国である、中国の為替レート切り下げの影響は小さくはない。人民元が切り下げられたことで、アジア諸国などの通貨は弱含みになるだろう。それは、結果的に通貨の切り下げ競争につながる可能性が高い。

 現在の世界経済の状況を考えると、通貨切り下げ競争によって最終的に強含むのは米ドルになるだろう。重要なポイントは、米国経済がそれに耐えられるか否かだ。