筆者はシリコンバレーに住んで14年になる。近隣にはスタンフォード大学がある。14年前にスタンフォード大学でMBAを取得しようとする人のほぼ全員が企業からの派遣だった。自費で留学してきている人は皆無だった。それがこの2-3年で企業からの派遣は少数派になった。現在在籍している留学生の大半は自費留学である。

 現在在学中の日本人留学生の一人に聞いたところ、アジアからの最大グループは、インドからが20人、中国からが17人、韓国からが6人、日本からが3人の順であるという。筆者が70年代にMITに留学していたときには、日本からが4人、インドからが3人、韓国からが1人、中国本土からはゼロだった。

 中国、インド、韓国の躍進を示す別の資料がある。米国の理工学系大学院で博士号を取得した留学生数の統計(National Science Foundationの2008年統計)によると、中国からの留学生の取得者が4,526人、インドが2,316人、韓国が1,440人、台湾が642人、日本が255人の順となる。

 過去4年間に、中国、インド、韓国、台湾のトップ4ヵ国の順位は不動である。日本は8位である。この数字を2000年からの伸び率を見ると、中国が1.9倍、インドが2.7倍、韓国が1.9倍とすさまじい勢いで増やしている。台湾は0.9倍、日本は1.2倍である。

 全米の大学が授与する博士号数(2008年)は48,802にも達するが、そのうちの1割弱を中国からの留学生が取っていることになる。これを出身大学別にランキングをとると、上位を中国の大学が占める。1位は中国の精華大学、2位が北京大学、3位になってはじめてカリフォルニア大学バークレー校が入ってくる。以下、4位が韓国のソウル大学、5位がコーネル大学、6位がミシガン大学と続く。

 日本は全く精彩を欠いている。なぜ日本企業は留学に消極的なのだろうか。原因はいくつかある。2000年以降に業績の悪化する企業が増え、経費削減のために制度の縮小を図ったこと。留学終了後に外資系企業に転職する人が増えたこと。こうしたことが留学制度の継続を消極的にさせているのだろう。

 企業としては人材育成のプログラムとして注意深く選考して派遣したはずであった。しかし日本の国力を担うべき人材が、日本と競争をする他国の企業にどんどん奪われてしまった。留学帰りを受け入れる日本企業側に問題があったのか、それとも本人がキャリア・チェンジをしたかったのか。原因は双方にあるように思う。