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前回は、早稲田大学ビジネススクール教授の内田和成さんに、若者の選択肢が増えている今、企業は若手社会人の採用・育成についてどう考えるべきか、あるいは若手が自身の成長についてどう考えるべきか、そのヒントをたくさん伺いました。今回はその後編です。
「“成功体験”というのは嘘で、人間は成功からは学べない」と言う内田さんも、若手社員時代は試行錯誤があったそうです。そこから、現時点での自身の成長や、人材の採用・育成で悩む方々に、気づきを与えるエッセンスが見つかるかもしれません。(構成/ダイヤモンド・オンライン編集部 安田有希子)
企業単位で「ダイバーシティ」を
推進するより大切なこと
平井 日本の企業では今、女性の活用をはじめとして、ダイバーシティの問題が問われていますが…。
内田 今の日本では、一つの会社の中に多様な人材を揃えなければいけない、と思うからおかしなことになる。コーポレートガバナンスの問題もあり致し方ない面もありますが、先日、経営者を集めた「早稲田会議」でもそういう話をしました。
国や産業単位でダイバーシティがあれば良いことで、別に何が何でも一つの企業内でダイバーシティを確保しなくてもいいんですよ。例えば、女性役員が何割で、女性の管理職が何割、そこにはLGBTもいて…とか(笑)。そんな話より、うちの会社はLGBTしかいないけど、ニッチで圧倒的にハッピーな会社だと掲げるほうが断然いい。
会社ごとに個性があって、それぞれを足し合わせると多様な社会になっているというほうが、活力が出ると思うんだけどなあ…。
平井 多様性ですよね。企業の採用でもそこは悩ましい所ではあると思うんです。私の友人が経営しているベンチャー企業でも、最初は社員が100人未満。みんな同じDNAを持っていて、それぞれ個性が強く、「多様性からの連帯」をベースに仕事ができるんです。それが500~1000人規模になってくると、いよいよ顔と名前が一致しなくなるし、当然事業規模も大きくなっていく。
1年に200名規模で採用しなければならなくなったとき、その人の個性とか、本当の優秀度合いとか、向上心や野心を理解せず、ある意味機械的にバサッと採用するとなると、“とりあえず優秀な人”を採用しがちだと思うんですよね。この問題は、何か工夫のしどころがあるんでしょうか?
内田 やっぱりそれは、“優秀な人”を選ぶのではなくて、私が最初に言った(前回参照)会社を好きな人を選ぶという点だとか…。
例えば、ユニ・チャームの高原豪久社長は、「優秀な人か、自社の哲学を分かってくれる人だったら、後者を優先する」と言っていますが、これは一つの見識ですね。でもこれは、経営者がそう思っているからできることで、銀行とか商社の人事の人が「俺の哲学で採用する」なんて言ったら左遷されてしまう。そうすると、トップに哲学がないとできないし、何かしらの工夫が必要でしょうね。