このところの中国株急落の影響を受け、中国人観光客をあてにしたインバウンド景気に対する減速懸念が広がっている。これまで何ら効果的な観光政策を打ち出せてこなかった日本は、中国人観光客の爆買いに依存しているのが現状である。2014年、訪日外国人観光客のうちリピーター客は54%、そのうち44%が中国人観光客となっている。

 さらに、世界的な金融不安から、今後は安定性の高い円に世界のマネーが流入し円高になる懸念がある。そうなると、円安に依存していた訪日観光客が急減するのは当然だ。

日本の観光政策は
シンガポール、香港より遅れている

中国経済が急減速となれば、爆買い客も減っていく?

 日本は、2014年に外国人訪日客が1341万人に増加し、観光収入も2兆278億円と一昨年より大幅に増加したと喜んでいる。しかし、世界ランキングでは、マレーシア、タイなどより低く、20位以下となっている。筆者が住んでいた香港の6084万人、シンガポールの1510万人に比べても少ない。

 人口500万人余りのシンガポールは、人口の3倍の観光客が訪れ、2014年の観光収入は2兆757億円だった。この数字は、日本とほぼ変わらない。2010年にカジノが設立されて以来、2013年には1550万人の訪客を記録し、GDPの6.7%を占める観光業は経済成長の一つの要因として安定している。

 対して、日本はGDPの1.7%しか占めておらず、観光業を成長産業にしようという政府の後押しが足りない。

 シンガポールの観光客の旅行消費額の内訳は「買い物」と「カジノ」が5割近くを占めている。カジノ設立時の2010年より前は観光客の大半が「買い物」を目的としていた。観光収入がGDPの5%を占めている香港の場合は他国より「買い物」を目的としている観光客が多く、消費額の7割近くを占めている。

 一方、訪日観光客は、「買い物」が35%でしかない。(「宿泊」が30%、「飲食」が21%)。たしかにシンガポールや香港は大自然や文化遺産といった観光資源に乏しい都市国家(地域)という特殊性があり、日本と単純に比較するのは難しいが、日本も観光立国を目指すうえで、ショッピング需要への力の入れ方が足りないのは事実だ。シンガポールや香港に学ぶべき点は多い。