心のエンジンと仕事のエンジンにベルトが掛かり、両方のエンジンを一緒に回す『ハイブリッド社員』。いま、その『ハイブリッド社員』たちが企業の中で増えてきており、さらに彼らが組織変革の大きな原動力になっているケースもあるという。公私をポジティブに融合し、仕事で自分の想いを叶えていこうとする彼らを、企業はどうマネジメントしていけばいいのか。
前回の【前編】では、企業トップの代表としてNTTデータの山下社長にご登場いただき、人材コンサルタントの高間邦男氏との対談の中で、これからの働き方を考えるうえでの「仕事への向き合い方」について語っていただいた。今回の【後編】では、これからの時代の「組織のあり方」や「組織との向き合い方」についてお聞きする。
≪前回の【前編】の記事はこちら≫
高間邦男(株式会社ヒューマンバリュー 代表取締役) 人材コンサルタント。明治大学商学部卒。産業能率大学総合研究所勤務後、1985年株式会社ヒューマンバリュー設立。企業のニーズに合わせて研修システムや変革プロセスを協働開発し、企業内で実施。1996年から「学習する組織」についての研究調査を行ない、現在はポジティブアプローチでの組織変革の手法を紹介している。主な著書に、『あなたの中の「変える」チカラ』(ダイヤモンド社)、『組織を変える「仕掛け」』(光文社新書)などがある。 |
会社は、
人がうまく生きていくための手段
高間●山下社長が考える社員像は、「自律した社員」というイメージのような気がします。会社と対等に対峙しているというか、会社の中心に自分がいるというか。
山下●僕はいつも「組織は手段である」と、周りにもそう言っています。それと、「組織は、その中にいる人間によっていくらでも変えることができる」とも思っています。
たとえば、組織として一番厳しいと思われる軍隊であっても、命に関わるような状況においては、命令だけでは人は従ってくれません。まして、軍隊のような厳しい規律のない会社組織であれば、命令や指示だけで人を動かすのは大変なことです。私が社員に自律性を求めるのは、上からの命令や指示で動くのではなく、個人が自主的にやることが一番よいからです。
山下 徹(株式会社NTTデータ 代表取締役社長) 1947年神奈川県生まれ。1971年東京工業大学工学部卒業後、同年日本電信電話公社入社。1988年のNTTデータ通信株式会社(当時)分社以降、開発本部企画部長、産業営業本部長、ビジネス開発事業本部長、経営企画部長などを歴任、代表取締役副社長執行役員を経て2007年より現職。 |
「組織を変える」場合においても、同じことがいえます。トップダウンで変えようとするのではなく、その中にいる人たち自らが「この組織を変えたい」と思い、行動することが大切なのです。個人にとって会社や組織はあくまでも手段なのですから、もしそこに違和感や居心地の悪さを感じたのなら、自分たちの手で自分たちが思うようにどんどん変えていけばいい。僕自身もそうやってきたつもりですし……。
高間●山下社長の役割は、そのような人たちを見守り、支援することだ、ということですね。
山下●僕が恵まれてきたのは、何かを変えようとしたときに、上司がそれを認めてくれ、支援してくれたからだと思います。どんな人でも、上から言われたことばかりでは、楽しみがなくなってしまう。むしろ、会社や組織をうまく活用するぐらいの器量があっていい。組織や会社を変えたいと思ったら、まずは好きなようにやってみること。それがどうしてもできない、それに値しないというのであれば、その会社に固執する必要がないのかもしれません。