協議修了後に懇談した際、サハリン大の教授から「あなた方は普通の日本人ではないね。日本人ははっきりものを言わないが、あなた方はストレートだ」と冗談っぽく言われた。サハリン大は日本の18大学と協定を結んでいるが、そのほとんどは「教育交流」だ。「研究交流」があっても、おそらく原住民の文化・歴史研究である。海外の大学との研究交流はあるが、そのほとんどは研究者・学生の派遣である。日本から来て、「サハリンの社会経済制度を本気で研究しよう」という我々のアプローチは、「計画経済」で育ってきたサハリン大の教授にとっては、珍しいものだったことが、上記の冗談となったようだ。

サハリン州経済開発省との面談:
政府が決めた問題だけ、研究を承認する

 翌28日午前、サハリン大教授の同席で、サハリン州経済開発省で、学術研究の統括責任者である部長と面談した。冒頭、部長から学術研究における経済開発省の役割は、「州内外の学術協力の舞台づくりと管理」であると説明があった。経済開発省では、2015-2020年の間の学術交流企画のロードマップを作成し、「石油・天然ガス関係の学術交流、シンポジウムの開催」「積雪など災害関係や、海洋環境問題の学術コミュニティづくり」を実行しているとのことだった。

 我々からは、エネルギー資源と社会保障制度について、ロシアと日本を比較する形で現状と共同研究の意義を説明し、研究を始めるにあたって、州政府の持つ社会保障関連の基本データ提供が必要であると訴えた。

 部長は、サハリン州政府が社会保障、福祉、教育、医療などについて「24の問題点」が存在すると決定していると発言した。その問題点に沿って研究を行うならば、共同研究を承認できるという。ただし、「複数の問題点に跨る研究テーマは許可できない」「24の問題点に含まれないものを新しく発見することは困る」とも付け加えた。

 その理由について、「24の問題点とは、社会全体のバランスを考慮して決められたもので、それ以外の問題について政策を作ると、全体のバランスが壊れるのを恐れる」ということだった。これも、「計画経済」的な考え方だ。「政府が認めた社会経済の問題はいいが、それ以外の問題の存在認めない」ということであり、要するに「政府は無謬である」ということだからだ。

「24の問題点」は、サハリン州のHPに掲載されている。今後、これに沿って、「研究計画書」を作成し、サハリン大経由で州経済開発省に提出することを約束した。ただ、協議自体は、昨日サハリン大から散々言われたような、お堅いものではなかった。部長は経済学の博士号取得者であり、サハリン大で10年ほど教鞭をとった経験もあるのだという。その意味で、基本的に学術研究の重要性に対する理解があった。我々に対しても、「必要な研究の場を提供する」との好意的な発言があった。