2014年9月、照明業界に大きな衝撃が走った。

 約9兆円にのぼる世界市場で最大手の蘭フィリップスが、照明部門を本体から切り離し、外部資本を活用することを決めたからだ。

 白熱電球の生産からスタートし、照明事業が祖業のフィリップスにとって、分離という決断は決して簡単ではなかったはずだ。

 その背景を紐解くと、フィリップスに限らず照明業界全体に、強烈な構造転換の波が押し寄せていることが分かる。

 電球の10倍以上、蛍光灯の3倍以上という寿命を持ち、価格の高いLED照明の普及で、業界各社は限界利益率が上がり、収益が向上したものの、その恩恵は長続きしなかった。

 北米や欧州でLEDの普及率が30%を超える中でも、照明の長寿命による販売機会の減少、中国勢などが仕掛けるLED部材の価格競争によって、売り上げが頭打ち傾向になってしまったわけだ。

 業界全体が人件費など固定費の削減に切り込まなければ、価格低下の波を吸収できず、また今後の成長戦略を描きにくい状況に陥っている。

 フィリップスは今年3月、LED部品と車載用照明事業を投資ファンドに売却し、健康・医療分野に経営資源を大きくシフトする戦略をより鮮明にした。

伸び悩む欧州の照明事業

 構造転換を迫る波は、同じく照明を祖業とし、世界シェアで3位につけるパナソニックにも、押し寄せている。特に、欧州ではその傾向が顕著だ。

照明業界に及ぶ構造転換の波 <br />「IoT」化に活路はあるかベルリン工科大学などによるLED街路灯の実証実験に、パナソニックグループは照明の遠隔制御システムを納入した(ドイツ・ベルリン市内)
Photo by Masaki Nakamura

 欧州市場の開拓に向けて、02年にLEDモジュールなど照明用デバイス製造・販売を手掛ける独フォスロ・シュワーベグループを買収したものの、08年の金融危機を境に売上高が減少。それ以降は、300億円程度(14年度)で伸び悩んでいるのが現状だ。

 特に、フォスロ社が主戦場とする欧州は、小規模な地場企業が各地域でひしめきあっており、大手であっても存在感を示しにくい市場環境にある。