日本の全基停止は驚き
規制当局はバランスを考えろ

──日本では、原発について“発電している=危険、発電していない=安全”といった思い込みが蔓延しているように私は思っている。今、日本の原発は全基停止している。米国ではTMI事故以降、今の日本のように全基停止せよといった声は出たか?

クライン 日本が全基停止していることに私は驚いている。日本は理論的かつビジネスライクに物事を進める国だと私は思っているが、原発の件では違うようだ。

 米国ではTMI事故後、原発への支持は下がったが、しばらくして過剰な恐怖感も消え、世論も落ち着いたので、原発は普通に稼働し続けた。日本では、一般国民も政治家もメディアも過剰反応したのではないか。そうした感情論が落ち着きかけても、メディアが火をつけ続けているというのもあるだろう。TMI事故のときは、カーター大統領(当時)夫妻がTMIの現場に訪れ、国民に向けて安全宣言をした。日本では福島事故後、当時の首相は国民の心配・不安を抑えることをしなかった。

バレット 全基停止が適切かとよく訊かれるのだが、答えはNOだ。日本は、文化的な面で世界の他の国々とやり方が異なり、極めて規律正しく、伝統的な手順から外れない国。毎年、定期検査で稼働を停止し、再稼働する際にはいちいち知事の了承を要するという手順だ。

 米国にはそういう手順がなく、TMI事故後も全基停止ということにはならなかった。ルールとして厳しく毎年停止させるとか、再稼働に知事の了承を要するということはない。TMI事故は人為的な事故だったが、米国の電力業界が事故後ほんの数週間で所要の改善を図ったので、NRCとしても稼働を続けながらでも安全上問題ないと判断した。

──それは前民主党政権時代のことで、その際、NRAを設立した。現自民党政権はNRAが合格を出した原発については再稼働させる方針としている。ただ、NRAの審査は非常に長い時間がかかっている。これについてどう思われるか。

クライン NRAは、発足したばかりの新しい組織なので、自分たちの意志決定に関して自信を持てていないのではないか。だから、どうしても保守的な方に寄り過ぎてしまうのだろう。私がNRC委員長だったときにも同じような問題が起こって、スタッフが保守的な方に寄るというようなことがあった。規制当局は、電力供給と発電停止のバランスを考えないといけない。日本では、時間はかかるかもしれないが、いずれはNRAも自信を持って規制を運用していける組織になっていくのではないか。