各地のコミュニティカフェの動向が注目されている。コミュニティカフェは売り上げや利益を第一の目的にしない、地域の住民の人たちが気軽に立ち寄ってお茶を飲んだり、おしゃべりを楽しむことができる居場所だ。「地域の茶の間」や「まちの縁側」、「サロン」、「コミュニテイスペース」など地域によって、いろいろの呼ばれ方をしている。
草の根の住民運動である。家の中で引きこもりがちな一人暮らし高齢者や遊び相手のいない子どもたち、話し相手の欲しい子育てママあるいは趣味やスポーツを披露したい人たちが集える場所だ。
昔あった「井戸端会議」や「縁側将棋」のような近所付き合いを再現させたともいえる。こうした活動によって、失われてしまった地域の人間関係を復活させ、コミュニティの再生を目指そうというものだ。
行政とは無縁の普通の市民の運動が、介護保険制度の新しい受け皿として脚光を浴びようとしている。介護保険の行き詰まりを打開しようと厚労省がコミュニティカフェに着目したからだ。今後、コミュニティカフェが次々制度内活動に名乗りを上げそうだ。
要介護度が最も軽い高齢者の
切り離し作戦?
介護保険の財源不足に悩む厚労省が打ち出した新方針のひとつとして、要介護度が最も軽い「要支援1、2」の高齢者の在宅サービスを国の所管から市町村自治体に移すことにした。ヘルパーが自宅に来る訪問介護とデイサービスと言われる通所介護の2つの在宅介護から始める。いずれ、他の在宅サービスも介護保険から切り離すと見られ、その第一弾だ。
介護保険の給付制度から市町村の独自事業に移行させたのである。そして、要支援認定者でない健康な人を含めて、自治体の「新しい総合事業」という新しい仕組みの中に取り込んだ。だが、「新しい総合事業」の中に「介護予防」の用語が乱発されて、制度全体がかなり分かり難い(図1)。
新制度は全国の市町村に呼びかけられ、この4月から実施されている。猶予期間を3年近く設けており、全市町村が実施する期限は2017年度中だ。
4月から始めたのは、全国約1750の市町村のうちわずか114と少なく、ほとんどの自治体はまだ準備に追われている。
自治体に移行される訪問介護と通所介護は、既存の事業者の他に地域のNPO法人やボランティア団体、町内会、自治体、あるいは社会福祉協議会など特別な介護資格を持たない人員にも運営を任せることにした。
これにより、報酬を安く設定できるからだ。最終的な狙いは、財源不足の解消にある。つまり、これまでは訪問介護のヘルパーは一定の研修を受けた有資格者に限定されていたり、通所介護も利用者が増えれば看護師などの有資格者が必須条件だったが、それらを取り払い普通の地域住民に委ねることで「安上がり」のケアに転換させよう言うことだ。
もちろん批判の声も多い。
「軽度の段階で専門家がきちんと対応すれば、中重度になり難く、本人も普通の生活を自宅で続けられる。ただの住民の素人任せでは、心身の症状を見過ごしてしまう。その結果、中重度への進行が早まる恐れがある」
もっともな批判である。だが、団塊世代が10年後には75歳以上になり利用者が急増していくのは明らか。そのための財源調達は難しい。国民は消費税のアップに反対しているのが現実でもある。そこで、軽度者の切り離し作戦が始まった。