映画製作の関係者たちは「中華民族は、ともに戦い、犠牲となった結果として、抗日戦争では勝利がもたらされた。毛沢東が率いる中共軍は、抗日戦争で中心的な役割を果たしている。カイロ宣言は、中共軍の貢献なしにはあり得なかった」と明言して憚らず、共産党を正統化するためのPR映画であり、歴史教育上のプロパガンダ(宣伝、吹聴)の一環である、と開き直っている。

共産党の正統化と威信を内外に誇示
虚飾に満ちた中国の軍事パレード

しまや・しろう
ジャーナリスト/学者/著述業。東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。日本経済新聞社(記者職)入社。論説委員兼論説副主幹を最後に、1994(平成6)年から大学教授に転じ、芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科教授などを歴任。この間に、学校法人桐朋学園理事兼評議員をはじめ、テレビのニュースキャスターやラジオのパーソナリティなどでも活躍。専門は、地球社会論、現代文明論、環境共生論、経営戦略論など。著書・論文多数

 戦勝70年の記念式典と軍事パレードも、この期に及んで改めて共産党を正統化するためのプロパガンダであり、習指導部の威信をかけてそ実権を国内外に誇示し、大いに国威を発揚してプレゼンス(存在感)を高め見直しを迫ることが、主たる狙いであった。習指導部としても、準備に万全を期した。開催前後の5日間は北京市内で国旗を掲揚し、前後3日間は休日とし、テロ防止のため、首都圏に厳戒態勢を敷いて、6万5000人の警官と85万人の警備ボランティアを動員、北京周辺一帯の工場は操業を中止して、青空も確保した。

 開幕を告げる70発の号砲が鳴り響き、来賓の各国首脳をはじめ、中国共産党の新旧の指導者たちを従えて、習主席が天安門の壇上に立った。習主席は演説で「中国は永遠に覇権を唱えず、拡張も図らない」で、平和な発展を目指す姿勢を強調し、「30万の兵力を削減する」と宣言した。

 軍事パレードでは、兵士1万2000人を動員、米大陸を射程に収めるICBM(大陸間弾道ミサイル)「DF(東風)5B」など、過去最多の7種類のミサイルを公開、空母に艦載する海軍の主力戦闘機「殲⒂」や陸軍の主力戦車「99A式」などを次々と披露、計500以上の兵器が登場し、そのうちの「84%が初公開」との触れ込み。近代化を加速した軍事力の威力を国内外に誇示すると共に、習主席の陸海空3軍に及ぶ掌握力をアピールして、天安門広場を埋めた約4万人の党及び軍の関係者や市民を圧倒した。

 しかし、その割にはどこか高揚感に欠けた、白けた記念式典で終わった印象が拭えないのは、筆者だけではあるまい。

 1つには、海外から参加した賓客の顔ぶれが寂しかったことである。49の国と11の国際機関の代表が参加したとはいえ、米英仏など欧米の主要国からの首脳級の姿は見えず、国連常任理事国のうち、首脳が参加したのはロシアのプーチン大統領だけ。いわゆる西側世界の指導者としては韓国の朴大統領だけであった。中国当局は、「招待を受けて代表を派遣しなかったのは、日本とフィリピンだけ」(中国メデイア)と成果を強調するが、ICC(国際刑事裁判所)から戦争犯罪などの罪に問われているスーダンのバジル大統領をはじめ、参加国には皮肉にも独裁色の強い発展途上国が多く、目立っていたことは否定できない。反ファシストの看板倒れである。