菅直人・財務相がにわかに増税論者に転向し、「税収増を経済成長に結びつける」のだと意気込んでいる。
その論理を説明すれば、
1.消費税率の引上げによって税収を拡大、
2.その税収を財源にして介護や環境などの成長分野に投資、
3.雇用が創出され、所得増につながる、
という展開になる。
本人は、「税と財政出動によっておカネの潤沢な循環をもたらし、第二のケインズ革命を起こす」と宣言するほどの入れ込みようだ。
だが、首をかしげざるを得ない。
菅財務相の念頭にあると見られる「介護分野」を例に、考えてみよう。介護を含む社会保障予算は少子高齢化とともに急拡大し、毎年およそ1兆円ずつ増加している。その給付財源は赤字国債の発行で確保している。菅財務相は今回、増税による税収を赤字の穴埋めに使うのではなく、新たな財源として、さらなる給付を行なうために使うと主張している。従って、増税によって財政収支が改善し、財政再建につながるわけではない。これが、第一の問題である。
第二の問題は、介護という社会保障分野そのものにある。
日本社会において介護を必要とする人々が急増することはが明白であり、ずいぶん前から介護事業の強化の必要性が指摘されてきた。「コンクリートから人へ」という合言葉を掲げる民主党が政権を取ってからは、とりわけ介護事業は箱物公共事業中心の財政出動脱却の象徴とされてきた。少子高齢化社会の必須かつ成長を見込める事業として、財政資金投入の最優先分野に挙げられてきた。政府だけでなく、メディアの論調もそうしたものだった。「これからはワイズスペンディング(賢い歳出)を工夫し、介護事業などに注力すべきだ」などというように。