TPP合意で加速する中国の独自経済圏形成を危惧する交渉で自動車は農業と並ぶ最重要課題だったが…

 2010年3月に開始されたTPP交渉が、10月5日大筋合意に達した。これに対してポジティブな論評が多く見られる。しかし、私は交渉の開始当時から、TPPに疑問を抱いていた。自由化の促進という抽象的な言葉だけが叫ばれ、その機能についての詳しい分析がなされていないからである。何より重要なのは、TPPがもたらすマイナスの側面が十分考慮されていないことだ。

コメと車は予想通り不満足な結果
TPPは成長戦略になりえない

 最重要の課題は、コメと自動車であった。そして、これに関する結果は不満足なものであった。

 コメについては、無関税輸入枠を増やすが、以下に述べるように、その分は財政資金で購入するのと同じことになる。自動車については、関税の全廃までに25年もかかる。

 コメも自動車も、交渉の当初から聖域化されており、もともと現状からの大きな変化は望めないと予測されていたが、実際にその通りの結果になった。

 今回の合意で最大の問題は、原産地規制の条件がかなり厳しく設定されたため、「中国排除」が現実化することである。中国は、これに対抗してすでに独自の経済圏形成に向かって進みつつあり、これが今回のTPP合意で加速化することはほぼ確実だ。これは、日本の製造業の将来に大きなマイナスの影響を及ぼす。当初から予測されたことではあったが、それが現実化しつつある。

 以下では、これらの各々について見ることにしよう。