2014年1月にオバマケアが導入されたが、これは民間保険への加入を義務付けることで無保険者の減少を目指したもので、日本のような公的な健康保険ではない。多くは勤務先などを通じて民間保険に加入しているが、民間保険に加入できない高齢者や低所得層の医療費は、メディケア、メディケイドという公的制度で面倒をみる仕組みになっている。

 アメリカでは市場に任せた結果、医療費が高騰したが、病気の患者を眼の前にして、民間保険の加入者だけに高水準の医療サービスを提供し、公的制度のメディケア、メディケイドの患者には低レベルの医療サービスしか提供しないといった線引きは不可能だ。民間保険の給付に合わせて、メディケア、メディケイドで受けるサービス水準も引き上げられ、公的制度の医療支出も上昇。そして、世界一医療費の高い国になってしまったというわけだ。

 もしも日本で混合診療を全面解禁すると、保険外の費用を賄うための民間保険の普及が進むはずだ。そして、その民間保険が医療サービスの利用を誘発させ、公的健康保険、生活保護の医療扶助も増加させることになるだろう。

 日本が法治国家である限り、健康保険の加入者や生活保護受給者に、「医療を受けるな」ということは不可能だ。そのため混合診療を全面解禁すると、これまで以上に医療費への財政負担が大きくなってしまうのだ。

 それは、日本が長年とってきた低医療費政策に反することになる。そのため、以前は全面解禁に積極的だった財務省が、最近では「混合診療」に触れなくなっている。

財務省の「建議」からも
消えた混合診療全面解禁

 今年6月、財政制度審議会が提出した「財政健全化計画等に関する建議」でも、医療制度改革の具体的な項目に「後発医薬品の使用促進」「受診時定額負担・免責制の導入」などはあげられているものの、「混合診療の拡大・解禁」には全く言及していない。混合診療の全面解禁は社会保障政策の致命傷になることを、財務省の役人たちも気がついたのだ。

 また、アメリカから日本の医療分野に対する市場開放圧力も、ここ数年、変化している。

 アメリカの通商代表部(USTR)が毎年発表する「外国貿易障壁報告書」では、2011年まではサービス障壁のひとつに「医療サービス」があげられ、「株式会社による営利病院経営」など市場開放要求が定番としてあげられていた。