トヨタ自動車のリコール騒動が燃え盛っている。米国議会の公聴会の場で、トヨタの豊田章男社長が厳しく糾弾され、新聞・雑誌などのメディアも激しい批判を浴びせている。

 「今年秋の中間選挙を意識した米国の政治家に囲まれた公聴会で、格好のアピールの標的にされてしまった」という、トヨタに同情的な声が上がる一方、「いかんせん対応が遅く、しかも拙かった」との見方も多い。

 そうした批判のなか、昨年からのリコール騒ぎの最中でも、一向に表面に出てこなかった豊田章男社長に対する批判の声は小さくない。

 もともと、自動車業界のリコールはそれほど異例なことではない。以前にも、部品の一部で発覚した不都合などによって、大規模なリコール騒ぎが起きたことはあった。それでも、ここまで問題が発展したことはなかった。今回に限って、何故ここまでの大騒動になっているのか?

リコール問題への対応の拙さが
選挙を控えた米国議員の餌食に

 今回、これほどまでに問題が大きくなった要因は2つある。

 1つは、米国のGMやクライスラーが破綻する一方、トヨタの事業規模が急速に拡大しているため、米国民の顰蹙を買い易い状況にあったことだ。それは、中間選挙を控えた政治家諸氏には、絶好のアピールの場となった。

 もう1つは、トヨタ自身の対応の拙さだ。同社の車について、部品などの不都合で事故が発生しているという報道は、実はかなり前からされていた。

 ところが、当初トヨタはそれに正面から取り組む姿勢を示さなかった。特に昨年の後半以降、米国での批判が高まってからも、最高責任者である豊田章男社長は、この問題に対して先頭に立って対処することはなかった。そうした態度が、米国の世論を燃え上がらせ、問題をここまで大きくしてしまったと言えるだろう。