デビット・モス教授の近編著“Preventing Regulatory Capture: Special Interest Influence and How to Limit It”(ダニエル・カーペンター編、デビッド・モス編、Cambridge University Press, 2013).

佐藤 今の日本企業の経営層に、モス教授ならどのように助言しますか。

モス まずは、企業ではなく、国が何かを改革するときにどのような政策をとっているかを考えてみましょう。硬直的な社会制度をもつ国で、国全体の制度を変えるのは大変なことです。そこで、中国をはじめ多くの国々では、経済特区を設ける、という政策を実施しています。経済特区は、小さな独立した島国と同じようなもの。そこでは、規範や規制が取り払われ、新しいことに挑戦することができます。

 同じようなことを企業でもやってみたらどうでしょうか。日本企業の中に若者が新しいアイデアを実現できる「経済特区」をつくるのです。そこではクレイジーなことにも挑戦することできます。有能な女性が管理職に登用され、女性のアイデアをフルに生かせる「経済特区」をつくるのも一考でしょう。

 仮に特区でいくつかのビジネスや実験が失敗したところで、規模が小さいので、会社全体に大きな損害を及ぼすことはありません。うまくいかなければやめればいいし、成功すれば、拡大していけばいいだけです。日本企業の中に、経済特区がたくさんうまれ、それらが徐々に拡大していけば、国全体も変わっていくと思います。

日本の民主主義は
ずっと深いところで機能している

佐藤 モス教授は、政治の歴史、特にアメリカの民主主義を専門に研究されていますが、日本の民主主義をどのように評価していますか。

モス これだけ長い間、経済停滞から抜け出せていないのは、日本の政治システムに問題があるから、というのは否定できません。日本政府が効果的な金融政策を講じていなかったから、依然として停滞したままなのです。

 とはいうものの、繰り返しになりますが、日本はとてつもない力を秘めた国です。政治システムも安定しています。経済状態が悪くなっても、暴力的な事件や、暴動が起きるわけでもありません。日本がいかに平和で安定しているか、というのは、経済問題をかかえる他国と比較してみればよく分かります。日本は「平和で安定した国をつくりあげる」という偉業に成功した国なのです。

 中国の例で説明しましょう。近年、中国はめざましい経済発展を遂げてきましたが、将来、経済成長が止まったり、株価が暴落したりすれば、政府は国全体をコントロールできなくなってしまうでしょう。それはなぜか。中国政府は、民主主義国家の政府とは違って、国民から信頼されていないからです。そのため、一旦、経済が崩壊すれば、反乱や暴動が起きる恐れさえあります。政府がいくら制圧しても、制圧しきれないほど拡大していくかもしれません。