2008年のリーマンショック以降、海運各社の赤字の元凶だったコンテナ船事業に、ようやく改善の兆しが見えてきた。
景気回復による荷動き増加や、荷主との運賃値上げ交渉など、あの手この手で赤字を縮小してきたが、苦肉の策として登場した減速運航の効果も大きい。
かつて、景気がよかった頃、海運各社はスピードを競い、最大速度である24ノットで運航するのが当たり前だった。しかし、最近では18~20ノットにまで、速度を落として運航している。
つまり、スピードを以前の7~8割にまで落としているわけだが、燃費効率は格段に上がる。
8000TEU(20フィートコンテナ換算個数)型のコンテナ船の場合、24ノットで運航すれば、1日当たり221トンの燃料を消費するが、これを18ノットに下げれば、102トンと、半分以下ですむのだ。
現在、燃料は1トン500ドルほどが相場。つまり、24ノット運航と18ノット運航を比べれば、1日当たり550万円ほども燃費を削減できることになる。
運航日数が余分にかかるだけ、供給は絞ることになるから、市場全体としては結果的に、一石二鳥の効果を得る。しかも、CO2削減にもなるため、荷主もイヤとは言いにくい。
「これからも、減速運航を止めることはないだろう」。日本郵船、商船三井、川崎汽船の海運大手3社は口を揃えてこう話す。
前期決算では、3社とも、コンテナ船で大赤字を計上。日本郵船と川崎汽船の2社はほかの事業でカバーできず、当期損益も赤字に沈んだ。今年度は各社とも、コンテナ船事業の黒字化を見込んでおり、最悪期をようやく脱出できる見通しだ。
しかし、コンテナ船は競争環境が厳しく、差別化を図りにくい事業であることに変わりはない。コンテナ船以外の事業で、どのように自社の強みをアピールしていくかが、船会社のもっぱらの課題である。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 津本朋子)