比較的、高所得者が住んでいると思われている東京都港区であっても、一人暮らし高齢者の半分は貧困に苦しんでいる。また、親子二人世帯での貧困も増えている。30年以上にわたり、高齢者の貧困問題を調査し続けてきた明治学院大学の河合克義教授に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 津本朋子)

「港区は高額所得者が住んでいるはず」
思い込みを打ち砕く衝撃のデータ

――7月に長年の調査をまとめた著書「老人に冷たい国・日本」(光文社新書)を出版されました。驚いたのは、高額所得者が住んでいると思っていた東京都港区であっても、山形県と同じ割合で、貧困に苦しむ高齢者がいる、という指摘でした。

タワーマンションが立ち並ぶ港区であっても、高齢者の貧困は確実に広がっている

 出版をしてすぐ、内閣府の税制調査会から呼ばれ、高齢者の社会的孤立と貧困の実態について、話をする機会をいただきました。そこでお示ししたデータのうちの一つが、東京都港区と山形県で実施した一人暮らし高齢者の調査です。港区でも山形県でも、生活保護受給基準を下回る収入で暮らしている人の割合は、ともに半分程度でした。

 これについて、参加者の方々からも「港区は豊かな地域のはずだと思っていた」と、驚きの声が上がりました。しかし、実際にはそうではないのです。全国的に見ても、一人暮らし高齢者の約半数は貧困水準だと思います。

 孤立死も増えています。東京都監察医務院の事業報告によれば、東京23区で65歳以上高齢者が自宅で一人で亡くなるという、いわゆる孤立死者数は2002年には1364人でしたが、12年には2733人に増えています。

 それでも、港区はまだ恵まれている方です。というのも、日本は公営住宅が不足していて、貧困世帯を直撃しているのですが、東京都と大阪府は比較的、公営住宅の数が多いのです。港区では一人暮らし高齢者の場合で25%の方が公営住宅に住んでいました。日本全体の公営借家率は、6%程度です。

かわい・かつよし
1949年北海道生まれ。明治学院大学大学院社会学研究科博士課程修了。81~82年、フランス・ナンシー大学客員研究員、現在は明治学院大学社会学部教授、東京都生活協同組合連合会理事、社会学博士。著書に「大都市のひとり暮らし高齢者と社会的孤立」「福祉論研究の地平—論点と再構築」(いずれも法律文化社)、「老人に冷たい国・日本」(光文社新書)などがある。

 神奈川県川崎市で今年5月、簡易宿泊所2棟の火災事件(11人が死亡)が起きました。居住していた人の多くは生活保護を利用している高齢者。同じく簡易宿泊所の多い横浜市寿町には、県内の他地域から、生活保護を利用している一人暮らしの高齢者が100人ぐらい送り込まれている現実もあります。

 公営住宅が絶対的に不足しているから、ケースワーカーが送り込んでいるのです。群馬県で10年に起きた「静養ホームたまゆら」の火災事件(10人が死亡)も、似たような構造から生まれた悲劇です。

 港区であっても「都営住宅に10回申し込んだけれど、外れてばかり」という声は良く聞かれます。その港区でさえ、他地域と比較すれば恵まれている。それほど、日本の高齢者をめぐる住宅事情は劣悪なのです。