誰もが「住宅弱者」になりうる日本の構造的問題を考える日本は災害の多い国。誰もが住宅弱者になりうる

日本のあらゆる人々にとって、いわゆる「住宅弱者」を含めて、「住」の確保の維持は切実な問題である。災害の可能性を考えれば、すべての人が潜在的な「住宅弱者」であるとも言える。

この問題に対し、自民党や政府は、どのように考え、どのような解決方法を考えているのだろうか?

すべての人が潜在的な「住宅弱者」
石破茂氏が語る住宅と地方創生

誰もが「住宅弱者」になりうる日本の構造的問題を考える「ちんたい協会」セミナーにて、内閣府参事官・大塚弘美氏が、被災地の住宅確保について講演しているところ。この日の東京は大雨であったにもかかわらず、会場は熱心な参加者180名でいっぱいだった
Photo by Yoshiko Miwa

 2015年11月18日の午後、東京駅近くで「地方創生と住宅ストックの有効活用」というセミナーが開催された。主催者は(公社)全国賃貸住宅経営者協会連合会(ちんたい協会)である。10月初旬に告知されたこのセミナーは、10月末には定員を超える申し込みがあり、受付が締め切られたという。

 参加者は約180名。参加者の多くは全国の「ちんたい協会」支部役員を含む賃貸業者であったが、中部地方や四国地方の自治体・保険会社・育児支援事業を提供する企業・シンクタンクなどからの参加者もいた。考えてみれば、この人々はみな、空き家問題と住宅弱者の問題の両方に関係しうるのである。

 セミナー冒頭では、石破茂氏(地方創生・国家戦略特別区域担当大臣)が基調講演を行った。ついで、空き家対策・住宅弱者の住宅確保・外国人技能実習生の住宅確保・災害時の住宅確保について、国交省・厚労省・内閣府からそれぞれ、制度の説明や事例紹介が行われた。

 言うまでもなく、現在の日本が抱えている重大な問題の一つは高齢化であり、高齢化に伴って住宅の確保や維持は困難になる人々が増加するということである。人口は減少に転じており、住宅ストックは今後、供給過多になることが予想される。しかし、そのような状況の中にありながら、生活保護受給者・ひとり親世帯・高齢者・障害者などの「住宅弱者」に対し、「市場原理が機能して住宅の確保が容易になる」という変化は起こっていない。また、2011年の東日本大震災・2015年9月の関東・東北豪雨などの自然災害によって、万人単位の人々が一時的にせよ自分の住まいに住み続けることができなくなったり、住まいを喪失してしまったりした。災害による「住宅弱者」化の可能性を考えれば、ほとんどすべての人々が、潜在的な住宅弱者であるといえよう。

 では、石破茂氏や国交省・厚労省・内閣府の人々は、この問題について何をどのように語ったのであろうか?