統合へ動き出したシャープの液晶事業と、日の丸液晶のジャパンディスプレイ。利害関係者の思惑が複雑に絡み、「消去法」での選択にも見える今回の統合は、日本の液晶産業に何をもたらすか。(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅) 

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「簡単に意思決定できる状態ではない。もう少し時間がかかる」

 2015年12月22日、経営再建中のシャープの支援を巡って、官民ファンド、産業革新機構の志賀俊之会長は、集まった報道陣に対してそう語り、支援方針の決定に向けて、当面は議論が続くとの見通しを示した。

 志賀会長が硬い表情で「複雑な案件」とも語ったその裏側で、一体何が話し合われたのか。

 外部の有識者を集めた産業革新委員会の議論と、シャープを資金繰りの面で支援する銀行側の動向を探ると、ある事実がくっきりと見えてくる。

「設備の重複については、どう認識しているのか」

 関係者によると、革新委員会の席上、ある委員から革新機構側の幹部に対して、そうした問いかけがあったという。

 問いかけの意味するところは、シャープの液晶事業と中小型液晶を手掛けるジャパンディスプレイ(JDI)を統合させた場合、両社で14ある液晶工場を、機構としてどう整理をつける腹積もりなのかということだ。

 つまり、支援策についてはJDIとの統合を大前提にして話が進んでおり、すでに統合後に過剰になる生産設備にまで踏み込んで、議論をしていることになる。

 では、なぜ官民ファンドの革新機構がシャープを支援する必要があるのか。理由は大きく分けて、二つある。