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コリア・ITが暮らしと経済をつくる国

マイナンバーが生活者の味方になるには?

韓国で試行錯誤の個人保護対策と日本の今後

趙 章恩 [ITジャーナリスト]
【第2回】 2016年1月8日
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日本のマイナンバーは
韓国企業の商機!?

 先日、日本のインターネット上のある書き込みを見ていたら、「自営業者はアルバイトのマイナンバーをどう管理したらよいのか」という投稿に出会った。「マイナンバー法」には、例えば、「正当な理由がない中、特定個人情報を第三者に提供した場合」には、4年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、または両方が適用されるなど厳しい罰則が規定されていて、仮に社員がこれを行った場合でも、企業は責任を問われるからだという。

 日本政府が出した「特定個人情報の適切な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」には、「中小規模事業者」の特例的対応が記載されていて、その中にマイナンバー管理の専門会社への委託の際の注意点なども書かれている。韓国の場合、自営業者は人事給料管理のクラウドサービスを利用して、社員の個人情報を管理するケースがほとんどだ。

 一方、韓国には、日本のマイナンバー制度導入に際し、ナンバー管理などのサービス提供を自国のビジネスチャンスと捉える向きもある。大韓投資貿易振興公社(KOTRA)大阪支店は2015年3月、日本のマイナンバーに関する報告書を発表した。

 そこには「(韓国のセキュリティ関連企業は、日本の)マイナンバー市場の成長可能性に注目して攻略する必要がある」「マイナンバー導入で日本企業は人事、給与システムをはじめ、社内システム全般を入れ替える可能性があるので、この分野も日本進出方案を探るべき」「日本の病院向けマイナンバー対応ソリューション需要が拡大する見込み」といった内容が書かれていた。

 韓国国内でも個人情報漏えい被害がなくならないのに、はたして韓国製システムを輸出できるのか、という批判も受けそうだが、これまで韓国が住民登録番号に関わる不正を防しようと、政府やセキュリティ関連企業などがさまざまな試行錯誤をしてきた経緯については、ぜひ参考にしていただきたい。

 日本政府の示した「マイナンバー制度利活用推進ロードマップ」によれば、日本でも近い将来、行政機関だけでなく銀行やカード会社など民間のサービスでもマイナンバーを用い、ゆくゆくは個人番号カードによる「ワンカード化」を目指すというからなおさらだ。

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趙 章恩
[ITジャーナリスト]

ちょう・ちゃんうん/韓国ソウル生まれ。韓国梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。KDDI総研特別研究員。NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。
IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「日経ビジネス」「日経パソコン(日経BP)」「日経デジタルヘルス」「週刊エコノミスト」「ニューズウィーク」「リセマム」「日本デジタルコンテンツ白書」等に連載中。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。

コリア・ITが暮らしと経済をつくる国

韓国の国民生活に、ITがどれほど浸透しているか、知っている日本人は意外に少ない。ネット通販、ネットでの納税をはじめとする行政サービスの利用、公共交通機関のチケットレス化は、日本よりずいぶん歴史が古い。同時に韓国では、国民のIT活用に対する考え方が、根本的にポジティブなことや、政府が規制緩和に積極的で、IT産業を国家の一大産業にしようとする姿勢などが、IT化を後押ししていることも事実である。

一方の日本は、どうして国を挙げた大胆なIT化の推進に足並みがそろわないのか。国民生活にITが浸透している韓国の先行事例を見ながら、IT化のメリットとリスクを見極めていく。

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