そもそも庁内の4~8階で特定の空調系だけに「白い粉」が飛散していた原因もわかっていない。一方、現在実施しているアスベスト除去工事の他に、庁内で何らかの粉じんが飛散する工事はないとも裁判所側は明かす。となれば、アスベスト除去工事中の飛散が疑われるのは当然だろう。

 つまり、閉鎖解除を決めた17日や法廷の使用を再開した21日段階では、アスベスト飛散を疑わせるデータがあるため、詳細な分析をしている状況にすぎない。「安全性が確認された」というには無理がある。

繰り返されるアスベスト飛散工事
危険な「居ながら除去」の実態

2013年12月に名古屋市の市営地下鉄・六番町駅構内で起きた飛散事故で、高濃度 のアスベストを検出した機械室前。事故から数日後の撮影だが、一見しても何が起こったのかわからない

 ちなみに、今回の東京高裁・地裁で起こったアスベスト飛散疑惑は、改修工事における典型的な問題だ。東京高裁・地裁のケースは現段階ではあくまで「疑惑」であるが、明らかにアスベストを飛散させていたと思しき改修工事の例は、全国で枚挙に暇がない。

 多数のテナントが入ったビルやデパート、駅、公共施設などでは、施設自体は閉鎖せず、周辺のテナントなどは営業を続けながら改修工事をする場合が少なくない。その際に吹き付けアスベストなどをはじめとするアスベスト含有建材の除去工事を伴うことは、珍しいことではない。

 問題は、そうした施設を利用しながら実施する改修工事のアスベスト対策で施工ミスが起こると、工事に携わる労働者のみならず、すぐ隣で営業している店舗や事務所の労働者、たまたま訪れた顧客など施設利用者までが、アスベストに曝露する危険に晒されることだ。

 しかも、屋外への飛散なら大気中に拡散しやすいが、こうした除去工事現場のすぐ隣の区画に施設利用者らが居るという「居ながら除去」は、飛散事故が多い上、高濃度のアスベストに曝露する事故が起こりやすいという。

 記憶に新しいものでは、東京都住宅供給公社が管理する都営住宅において、2008年以降の空き家補修工事でアスベストを飛散させる違法工事を計70回も繰り返していたことが、2015年6~7月に発覚した。法で定められた事前調査を実施しなかったため、アスベストを含有した吹き付け材の存在に気づかず、対策なしに除去していた。しかも都や公社は曝露した可能性のある近隣住民にろくに説明しない始末だった。

 2013年12月には、名古屋市の市営地下鉄・六番町駅で飛散事故が起こった。この事故は、地下鉄駅を通常通り使用しながら利用者のいる昼間に機械室のアスベスト除去工事を実施した結果、発がん性が最も高いクロシドライト(青石綿)が駅構内のエレベーター前で、1リットルあたり710本という高濃度で検出された。