年初から大荒れの相場展開
早速「公的年金の損失額」が話題に

相場大荒れでまたも大損失!?<br />公的年金の「運用責任」は誰にあるか公的年金の運用損に「怒り」を覚える人がいてもおかしくないが、その怒りは正しい方向に向けるべきだ

 世界の資本市場は、年初から大荒れの展開となった。原因は、直接的には中国の経済低迷と株式市場の混乱だが、原油をはじめとする資源価格低下と新興国経済・財政の問題や、昨年末に行われた米国FRBの利上げも背景にあるのではないかと思われる。

 日経平均で見た日本の株価は、大発会の1月4日から1月12日まで6取引日連続で下落し、1万7200円台で、1万7000円割れ寸前に迫っている。ちなみに、2014年末は1万7450円なので、ここまでの数日で、昨年の上昇分を全て吐き出した勘定になる(もっとも「運用利回り」としては年率1%台後半の配当があるので、まだわずかにプラスの計算だ)。

 こうした状況になると、メディアで話題になるのが「公的年金の損失額」だ。新年も、例えば「日刊ゲンダイ」(9日売りの1月11日号)が早速、「株年初来5日続落 年金4兆円損失」「この責任は誰が取るのか もはや制御不能となった鉄火場相場の現状とそこに公的マネーをぶち込む危うさと狂気」「嗚呼 年金がどんどん消えていく」と賑やかに取り上げている。

 公的年金の運用責任の所在については、12月2日付の本連載「GPIF『損失8兆円』で怒りを向けるべきは誰か?」でも取り上げており、本稿はその再論だが、要点の再確認と共に、「責任」についてもう少し掘り下げて考えてみたい。公的年金の運用損失に「責任があるとすれば」、誰にあるのだろうか?

公的年金積立金の損失額簡便計算
日経平均が1000円下がれば4兆円の損

 読者をはじめとして、世間のニュースに関心をお持ちの方でも、資本市場の数字で絶えず意識の中にあるのは日経平均とドル/円の為替レートくらいだろう。この際、後の議論にリアリティを持たせるために、日経平均が変動すると、公的年金の積立金がどのくらい変動するのか(基本ポートフォリオで見た運用計画としては「どのくらい変動すべき」なのか)、ざっくりと見当を付けておこう。

 最近の相場下落で金額はもう少し減っているはずだが、GPIFが運用する資産額は、ざっと140兆円だ。そして、運用計画の「基本ポートフォリオ」は、「国内株式」が25%、「外国株式」が25%、「外国債券」が15%、「国内債券」が35%、なので、計画通りに運用したとして、GPIFが保有する国内株式はざっと35兆円ということになる。ここで、計算がしやすいように日経平均を1万7500円とすると、日経平均が500円動く毎に、GPIFの保有する株式時価が1兆円変動することになる。