日本と世界の主要国の大学進学率には、中退率が異なることや教育制度が異なることなど単純に比較できない面もある。しかし、少子化で分母が減っており、かつ「大学全入時代」を迎えているにもかかわらず、先進国の中で高いとは言えない大学進学率が上昇しない日本は、進学に対して独自の価値意識が存在していると考えるべきなのではないだろうか。

 2014年3月に卒業した全国の高校生の進路は、大学・短大への進学が54%、専門学校が17%、予備校や外国語学校などの各種学校等が5%、これに公共職業能力開発施設を加えた広義の進学者が77%、就職(働きながら学ぶ人を除く)が17%、その他が6%だった。

 東京23区では大学・短大進学率が67%に上り、専門学校は12%とやや低いものの、広義の進学者は85%を占める。一方で大学・短大への進学率が低い東部3区は専門学校への進学率が20%を超え、なかでも足立区は25%を数える。大学・短大か専門学校かは別にして、「進学」という大きな枠組みの中ではバランスが取れているようにも思われる。

東京の「懐の深さ」が見えてくる
薄っぺらな学歴社会でない23区の姿

 ここまで分析してきたように、少なくとも東京は画一的で薄っぺらな学歴社会ではない、ということをご理解いただけたと思う。

 昨年末、大きな話題を呼んだTBS系ドラマ『下町ロケット』。主人公の佃航平が率いる佃製作所でロケットや人工臓器に欠かせない超精密部品の製造に取り組む彼らの誇り、それは「穴を開ける」「削る」「磨く」といった、大学とは縁遠い、むしろ専門学校で学ぶべき技術・ノウハウに立脚していた。と同時に、彼らの前に立ち塞がる抵抗勢力たちは明らかに高学歴者であり、その性質が画一的であるがゆえにビジネスの未来が見通せなくなった、という構図が見え隠れしている。

 もちろん『下町ロケット』は、原作者である池井戸潤氏の創作ではあるが、そのモデルは東京のそこかしこにある、ごくありふれた中小企業の姿に他ならない。そんな彼らの存在こそが、わが国の今を支え、未来を切り開いていく上で欠かせない原動力となっている。『下町ロケット』が多くの人々の心を打った根底には、この事実への“共感”が存在しているのではないだろうか。

 なるほど、学歴階層社会は存在するかもしれない。が、それは決して優劣を意味するものではない。むしろ、地域や住民の個性を際立たせてくれる存在なのだ。冒頭で述べたように、格差を知ることはその地域の魅力を再発見することにもつながる。そんな東京の懐の深さが23区の「学歴格差」からは見えてくる。読者諸氏は何を感じただろうか。