「1年~5年という長期にわたり、私の話を聞いて、職場との間を取り持ってくれるサポートがあれば、どんなに安心して仕事を続けられるかと、何度思ったことでしょう」

 過剰な責任感や人間関係。そんな偏った認識を気づかせてくれるサポートや、気軽にカウンセリングを受けられる環境が整備されていれば、こうした「生きづらさ」も少しは軽減させることができるのではないか。

“差別”制度廃止とモデルチェンジを
当事者と家族を救う「精神医療改革」の姿

 同会議の提言によると、「これまでその対策が遅れてきたために、40万人から300万人とまでいわれている“引きこもり”が発生し、社会の重大問題になっている」と指摘。「重症化して、入院するまで放置される今のあり方を早急に改めなければ、多くの若者の人生が損なわれ、国の損失が嵩む」と訴える。

 また、「いまの日本では、家族に支援がなく、自らも心身を病み、経済的にも追い詰められ、絶望のうちに日々を送っている」と、家族の置かれた実態を浮き彫りにした。そのうえで、「重症化した当事者と家族のなかの多くの人々が、医療と福祉から必要な支援が得られず、自殺や心中の決行をやっとのことで思いとどまっている」として、「家族に対する支援は、喫緊の課題だ」としている。

 具体的には、まず「精神科特例」の廃止を訴える。精神科特例とは、精神科病棟の医師数は他の診療科の3分の1でよいという医療法の規定だ。この特例は、精神科だけ人手も医療費も少なくてよいという「明らかな“医療差別”制度だ」と批判する。

 また「ひきこもり」などの背景にも、心の問題がある。これまでの入院治療中心でなく、すべての心の健康問題全般について、包括的な政策を講じることが必要だ。

 さらに、「多職種チーム医療」と、「アウトリーチ(家庭訪問)医療」を普及させ、医師が医療機関で待っているだけでなく、必要とする国民の元に出かけてサービスを届けていくという精神科医療のモデルチェンジを目指している。

 医師の「アウトリーチ」が「引きこもり」当事者に有効であることは、以前も本連載で報告してきたとおりだ。

 これまでは、社会問題化した事態について、個別の対応を積み重ねてきた。しかし、今後は、こうした精神医療改革を進めるため、提言では「精神疾患対策基本法案」(仮称)を制定するよう求めている。

 当事者や家族の意見が反映された提言自体、画期的な取り組みだ。国が今後、どう生かしていくのか、注目される。