中国の金融市場、特に上海株が大きく荒れています。上海株は今年に入り2割弱も下落し、大暴落といった様相を呈しています。中国はこうした金融の混乱に慣れていないため、金融当局もサーキットブレーカー(市場に冷静さを取戻させるために一時的に取引を停止する制度)の運用を停止するなど混乱しています。残念ながら、市場が安定する気配は感じられません。

 実は、中国金融市場大暴落のカギとなっているのが、国際通貨、そして基軸通貨への道を歩み始めた「人民元」です。今回の混乱は、世界の投機筋にまたとない好機を与えているのです。

 現在、中国は“100年”と“30年”の2つの大きな長期的経済計画を進めています。1つは国家創設100年の2059年に「世界一の経済大国」になるという“100年計画”です。中国は、経済規模(GDP)ではすでに日本を抜いて世界第2位になっています。そして、もう1つは「人民元を基軸通貨」にする“30年計画”です。実体経済のみならず、金融経済においても世界一になろうということです。しかし、この人民元の基軸通貨化が、今回の中国の金融混乱を拡大させている可能性が高いのです。

人民元安になると上海株は下落する

 人民元と上海株の関係の特徴は、日本円と日本株の関係とは違います。日本円と違い、人民元安になっても上海株は上がりません。それどころかさらに下がります。資本が流出しているということで、さらに上海株が下落するという相乗作用が起こるのです。それに加えて、中国の大企業には外貨建て借金(債権)が多く、人民元安になると負担が増え経営が悪化します。

 そのため、当局は上海株市場よりも、まずは人民元の為替市場の対応に注力していますが、今回は以前のように大量の介入等はできなくなっています。それは、人民元を基軸通貨にしようとしているからです。

 中国は人民元を基軸通貨にする中間目標として、IMF(International Monetary Fund:国際通貨基金)のバスケット通貨SDR(Special Drawing Right:特別引出権)の構成通貨になることを実現しました。構成通貨になる条件は、通貨が使われている規模と、自由な国際通貨であることです。規模の面は問題なかったのですが、国際通貨の条件を満たしているかどうかということが問題になりました。

 その国際通貨の条件とは、具体的には、金融市場の自由化、資本移動の自由化、市場実態への合致化等であり、いわゆる「自由化」です。