「琉球独立論」の背後に
見え隠れする中国の存在

 以上のような歴史的経緯により、実際に沖縄には「琉球独立論」が存在している。翁長沖縄県知事もこれに強い影響を受けていると言われている。安倍政権は、これを「民族的な同質性が高い日本ではありえない荒唐無稽な議論」として切り捨てるべきではなく、慎重に扱うべきである。

 なぜなら、「琉球独立論」の背後には、中国の存在が見え隠れしているからである。琉球王国は、かつて中国を中核に周辺国家がシステム的に序列化され、決められた通商路、貿易港を通じて中国の朝廷に対する儀礼活動や、経済活動を行う「冊封体制」に組み込まれた国家だったという。そして、琉球王国は、東アジアの中心に位置するという地理上の優位性を生かし、中継貿易のセンターとなり多大な利益を得て、冊封体制の中で朝鮮に次ぐ第2位の地位を維持してきたのだという。

 琉球王国を日本は1879年に併合した。日本ではこれを「琉球処分」と記述するが、実際は独立国であるにもかかわらず日本政府の一方的な命令に従わないことを処罰の理由として、軍事力を背景に強制的に王国を廃し、国王を廃位させたものであった。事実上、日本による「琉球併合」だったといえる。

 これに対して、琉球王国は、1872、74年に使節団を清朝に派遣し、清国との冊封関係の継続を望んだ。独立を維持するために清国を頼ろうとしたのだが、欧米列強の植民地収奪競争にさらされていた清国には、琉球を支援する余裕はなかった。これによって、日本による琉球支配は既成事実となった。

 この歴史的経緯を根拠に、中国には沖縄が日本ではなく中国の領土であるという主張が存在し、中国共産党員やマスメディア、学者や現役の軍人の間に広がりつつある。

 人民日報系の環球時報は「沖縄は明治政府が19世紀末に清国から奪い取ったものであり、日本政府は現在も沖縄人の独立要求を抑え込んでおり、またかつての琉球王国住民の大部分は福建省、浙江省の出身で、言葉も制度も中国大陸と同じだった」とし、「琉球諸島の中国本土復帰」を主張する。中国国内には「日本からの沖縄解放」を主張する団体も存在しているという。

 これは、中国政府が公に主張していることではない。現在のところ、「琉球独立論」の背景に中国がいるというのは、いわゆる「陰謀論」の類でしかないかもしれない。だが、さまざまな国との間の「領土問題」について、自らに有利な論理を一方的に展開していくのが中国の常套手段である。今後、沖縄県民の「被差別意識」が更に高まり「琉球独立論」が拡大するようなことになれば、中国がそれに乗じて沖縄に介入するという懸念もありえないことではない。