赤字のときこそ、資本政策を考えるチャンス

 Xさんから相談を受けたとき、私は「借金をして株を買い取り、会社の意思決定を速くする。Xさんは、まずはそこから」とアドバイスをしました。

 しかも運よく、X社は4期連続で赤字だったので、株価は額面割れ。X社長は約800万円の借金をして、親戚が持っていた株を買い集めた。

「こうした資本政策は、会社の業績が悪いからこそできたのだと思います。もし、会社の業績がよかったら、親戚たちも株を手放そうとは思わなかったでしょう」(X社長)

 私の「かばん持ち」をした株式会社スクウェア(ソックス・タイツの製造・販売/大阪府)の前田哲博社長は、「当社は共同経営だから、株を独り占めするわけにはいかない」と考えていました。

 しかし、非上場会社が経営安定を願うならば、株式はひとりに集中させたほうがいい。業績がよく、株価が目が飛び出るほど高かったのですが、「買いなさい」と指示しました。

 株式を50%対50%で所有する場合、創業期や経営状態が芳しくないときは、お互いが協力をするので、うまくいく。でも、業績がよくなると、袂たもとを分かつことが多い。なぜかというと、それぞれが自己主張するからです。

 経営の安定化を図るには、銀行からお金を借りてでも、内部留保を減らしてでも、社長の株式保有率を「67%以上」にすべきです。

 非上場の中小企業では、「所有と経営を分離させない」ことが正解です。