仮説の検証を繰り返し
目利き能力を鍛える

 それを実際に店の品揃えに反映させ、その効果を検証してみる。こうした活動の中から、見えていなかった消費者の頭の中を垣間見ることが可能になる。また、こうしたことを続けるうちに、次第に消費者の感じていることを我がことのように実感できるようになっていく。なぜなら、OFCの無意識の世界の検索パターンが、消費者に合わせてチューニングされていくからだ。

 これが目利き能力を獲得するメカニズムである。この目利き能力を一旦獲得できれば、後は顧客の内面に関して、勝手に仮説が浮かび上がってくるようになる。鈴木氏がその重要性を理解していることは、次の言葉から伝わってくる。

「POSデータは仮説を検証するためのものだ。問題意識を持って動きを見れば、意味や文脈が浮かび上がり、そこから仮説が生まれる」

「直観と客観によって仮説を立て、実行した結果を検証し、発想力をさらに強化していく」

 つまり、仮説の検証を繰り返すことで斬新な仮説を設定する力を高めることが可能なのだ。セブン-イレブンは、まずOFC自身に仮説の検証を繰り返させることで、地域の目利き能力を身につけさせる。

 その際、週次ミーティングを通じてOFCの無意識の世界を刺激し続けることが重要なのだ。それによって新たな仮説が浮かび上がるまでの期間を短縮することができる。そして、それを繰り返すことで目利き能力を獲得したOFCが、今度は地域の店長や店員に同じように刺激を与え、仮説の検証を繰り返させる。毎日1000万人の顧客の行動と心理を読むのだ。そこで鍛えられた力が、組織としての成功要因にならないはずはない。

 セブン-イレブンにとって週1回OFCを集めることは、仮説の検証を後押しするために不可欠のことであり、成功事例集で代用できるものではないのだ。セブン-イレブンの店舗を見ていても、他のコンビニとの違いには気づきにくい。それにもかかわらず、1店舗あたりの売上高に大きな差が出ているのは、こうした目に見えないところに成功要因があるからだ。

 鈴木氏は多くの経営者とは異なり、「現場主義」を重視しない。目の前の現象に踊らされることを懸念するからだ。いま目の前で売れているものを自店の棚に並べてみたところで、情報革命の時代においてはすぐに顧客に飽きられる。確からしいものにすがるのでなく、勇気を出して顧客に対して先手をとってはじめて、相手の琴線に触れることができる。

「私はこれが欲しかったんだ!」という驚き、そんな商品と出合った喜びこそが、顧客に財布の紐をゆるめさせる。このため鈴木氏は、「明日のお客様」が何を求めているかについて仮説を立て、徹底的に検証すことを求める。このあたりは、「顧客が何を望むかでなく、何を望むようになるかを考える」と言っているスティーブ・ジョブズと共通するものがある。

 鈴木氏が、客観的な「データ主義」を標榜する一方で、直観を重視するのは、データによる検証の繰り返しが、新しい仮説を生む力につながることを知っているからだ。ジョブズが自然科学と人文科学、技術とデザインの両面性を持っていたのと同じように、鈴木氏もある見方からは客観的に、別の見方からは直観的に見える。