先進医療は、あくまでも実験段階の治療なので、先進医療の届け出後は、治療成績など科学的な統計データを厚生労働省に報告することが義務付けられている。

 ところが、粒子線治療に関しては、施設は次々と作られるものの、客観的な評価に耐えうる統一的な治療データがとられていなかったのだ。先進医療会議でも、再三にわたり、施設間で協力して統一的な治療成績をとることを求めていたが、医療機関側の対応は鈍かった。

 そのため、2012年以降は、「既存の放射線治療との比較データがない」「技術的成熟度の報告がされていない」などの問題点が指摘され、暫定的に先進医療の枠組みでの治療が継続されてきた。

 そして、とうとう、2014年度の保険適用を決める先進医療会議で、次の診療報酬改定までに、(1)これまでの治療データを施設間で統一して科学的に解析すること、(2)治療する臓器の部位によっては新たに臨床試験を行い、きちんとした形でデータの収集を行う、といった2点が求められた。粒子線施設に対して、先進医療会議から最後通牒が突きつけられたのだ。

 これを受け、日本放射線腫瘍学会が、それぞれの粒子線施設で行われてきた治療実績を取りまとめ、臓器別の治療データを2015年8月の先進医療会議で報告した。

 しかし、その報告では、前立腺がんや肝臓がんなどについて、エックス線やガンマ線を用いた既存の放射線治療と比べたものの、比較条件が揃っていなかったり、治療件数が少なかったりして、粒子線治療の優位性を示すデータを集められなかったことが明らかになった。

 つまり、先進医療の導入から15年もたつというのに、有効性を示す明確なデータがないまま粒子線治療は行われてきたということだ。

 そのほかの先進医療技術との公平性を図れば、粒子線治療が先進医療から削除されてもおかしくない状況ではある。だが、すでに日本各地に粒子線施設は作られており、いきなり外すことは社会的な影響が大きすぎる。

 そのため、今回の審議では、ほかには有効な治療法がないなどの理由で、今回は小児の固形がんに対する陽子線治療、切除できない骨がんへの重粒子線治療に限定して、健康保険の適用が認められることになった。