職場も家庭も
弁証法的対話術で豊かになる

 正直、ここまでやっても、なおかつ相手が喧嘩腰ならば、その相手とコミュニケーションをとるのは難しいだろう。残念ながら、そういった人物はいくら優秀でもチームプレイヤーとしては失格になる可能性が高い。逆にいえば、上記の4段階を踏むことで、ビジネスパーソンとしての「コミュニケーション能力」を測定できるのである。人事上のひとつのツールとして役立てることができるだろう。

 筆者の経験からすると、日本人は西洋人に比べて、この弁証法的対話モードに入れない人が多い。その理由は多分歴史的なものだろうと思う。西洋哲学を基礎におく弁証法的対話は数百年にもわたり、西洋人のコミュニケーションの基本となってきたのに対し、日本を含む東洋ではまだ歴史が浅く、草の根レベルでも浸透していない。

 だが、日本人でも、きちんと訓練を積めば弁証法的対話をマスターすることは難しくない。筆者は幸いなことに、大学院時代に指導教官や同僚たちに鍛えられた。同様に、上司や同僚が「意識的にお互いに了解をとって」弁証法的対話を行う見本を見せ、部下をそれに巻き込むことによって、議論がいかに生産的になるかを学ばせることができれば、弁証法的対話術はやがて組織文化となって根付くだろう。

 それは、ビジネスのみならず、夫婦や親子の会話等でも重要になるはずだ。弁証法モードを意識した対話は、人生の豊かさにも寄与すると、筆者は割と本気で考えている。