人事部スタッフの集うネットワーキングパーティに参加しても、誰も名刺交換をしていなかったり……人事部スタッフのコミュニケーション能力の低さは目に余る。一方、草食化したと言われる学生も、名刺交換が苦手な人が増えているようだ。これでは企業の将来が思いやられる。
名刺交換をしようとしない人事部
名刺を持たない大学生
今から数年前の話だが、各社の人事部メンバーを対象とした、人材紹介会社主催のネットワーキングパーティがあって出席したことがある。文字通り、各社の人事部の方々とネットワークを作るたいへん良い機会だ。みなさん談笑や食事の手を止めて、にこやかに名刺交換に応じてくださる。しかし、はたと気づいた。名刺交換のために動き回っているのは、主催元の人材紹介会社のスタッフと、私、そして私の同僚だけだったのだ。
他の参加者は、同じ会社から参加したと思わしき人同士で談笑し、食事を楽しんでいる。一方で私は食事もしないで、名刺交換に奔走しているわけだ。同僚の田中氏(コンサルタント)に、「名刺交換しているのは、俺たちだけだな」とつぶやくと、田中氏は、「ですよね。ネットワーキングパーティなのに、(他の方は)何をしに来ているのでしょうね。でも、営業の方ではないから、(名刺交換という)習慣がないのでしょうね」という反応だった。
その後、ほどなくして、大学弁論部のOB会に参加し、100人を超える在学生とも会う機会があった。人事部長をしていた私は、当社を希望する優秀な学生がいればコンタクトしたかったし、それに限らず何か学生の就職活動に役に立つこともあるかもしれないと思い、特に3年生を中心に名刺交換をしようとした。すると、驚くことが起きた。名刺交換にならないのだ。なぜなら、ほとんどの学生が、名刺を差し出さないからだ。
この話をすると、たいがい驚かれるのだが、その驚かれ方は正反対の2つに分かれる。一方は、「そりゃ、驚きだ。なぜ就職活動をしている3年生が名刺を渡さないのだ。OB会で名刺を渡さないでいつ渡すのだ」という学生に対する私と同じ憤慨だ。そして、他方は、「学生なのだから名刺を持っていないことが当たり前ではないか。学生が名刺を持っていないと驚いていることに驚く」という、私に対する違和感だ。