仕事は自分や家族の幸せのためにするもの
佐々木常夫著 KADOKAWA
191p 1300円(税別)
私が役員をしている会社に、ベルギー人の女性研究者が在籍していたことがある。彼女はその会社にいる間に子どもを二人出産したのだが、育児休暇を取りたがらなかったのが印象的だった。研究者という個人の業績が重視される職種のせいもあるのだろう。彼女は仕事を完全に休むことでアウトプットできない期間ができるのを避けたかったのだ。
日本では出産後子どもが1歳になるまで、約1年間の育児休暇を取得するのが一般的だ。だが彼女は法律で定められた産後8週間しか休まなかった。復職後は時短制度などを活用しながら効率よく働くことで、育児と仕事の両立を見事に図っていた。
会社側も、生後間もない子どもを受け入れられる保育所を見つけて紹介するなどのサポートはした。しかし、そもそも彼女自身が仕事を中断したくないという強い思いを持っていなければ、両立は難しかっただろう。
なぜ彼女はそんな強い思いを持てたのか。それは、彼女が会社に与えられた仕事やミッションだけをこなしていたのではなかったからだ。自分自身の仕事とミッションを強く意識していた。その上で、家族を犠牲にすることもなく、上手に会社や周囲に頼りながら効率のよい働き方を工夫し、実践していった。
ただでさえ育児と仕事の両立は大変なのに、さらにいくつもの困難を乗り越えながら、企業の第一線で活躍し続ける人もいる。自閉症の長男を含む3人の子どもがいて、肝臓病とうつ病を患った妻を抱えた多難な家庭を支えながら、一部上場企業の取締役まで務めた。その人は、家族の世話をする時間を作るために、いかにして短い時間で効率よく働き期待される成果を出せるかを考え続けた。また、リーダーとしても自分のチーム全体が効率良く働ける環境を作るためにいろいろな工夫をした。
実はその人こそ本書の著者、佐々木常夫氏なのだ。