逆に、わが国では日銀のマイナス金利の実施もあり、表面金利は下がっているものの、わが国経済のデフレからの脱却が遅れていることもあり、期待インフレ率は低下している。そのため、円の実質ベースの金利はむしろ上昇傾向にある。そうした実質ベースの金利差を見る限り、円が買われやすく、ドルが売られやすくなっている。

 また、米国の企業業績が悪化したことも無視できない要因だ。米国企業の業績は昨年夏場以降、マイナスに転じている。主な理由はドル高と原油安だ。産業界からは政策当局に対してドル高是正の要請が強まっている。オバマ政権としても、今秋の大統領選挙を控えてその要請を無視することはできない。

為替市場で円高・ドル安が進む理由
アベノミクス逆回転のメカニズム

 ヘッジファンドなど大手投資家は、円安・ドル高の方向性に変化が出たことを見逃すはずがない。特に為替担当のアナリスト連中は、米国政府の為替政策に関する姿勢には極めて敏感に反応する。彼らは、米国政府のドル高に歯止めをかけたい意向を敏感に読み取ったはずだ。そして、そうした米国政府の政策の変化を利用して、ドル売り・円買いで収益を上げることを考えたはずだ。

 それは、シカゴの為替先物の投機筋(ノンコマーシャル)の持ち高(ポジション)が、昨年までのドル買い持ち・円売り持ちから、円買い持ち・ドル売り持ちに変化していることを見ても明らかだ。

 ヘッジファンドのマネジャー連中とメールのやり取りをすると、一部のファンドが為替のオペレーションに加えて、日本株の売買も積極的に行っていることがわかる。円が上昇すると、わが国の主力輸出企業の収益状況は悪化することが想定される。

 彼らは円相場と日本株の関係を使って、積極的に円を買い上げて円高傾向にする一方、株式の先物を売って株価を押し下げることを狙っているように見える。そうしたオペレーションは、日本の株式市場が世界から取り残されるように低迷している理由の1つかもしれない。

 そのほか、原油価格下落に伴って有力SWF(ソブリン・ウエルス・ファンド)や、アベノミクスに失望した海外ファンドが、保有する日本株の売却に走っているとの観測が出ていることも、日本株市場にはマイナスの要因になっている。

 足もとの円高・日本株安は、これまでアベノミクスがもたらしてきた円安・株高の成果を逆回転させることになりかねない。