中国市場を狙う際に、「中国人富裕層」をターゲットにする日系企業が多い。
成長著しい中国といえども、「ローカル商品と比べて高価格となる日本ブランドの商品を購入できるのは、中国人富裕層に限られる」ということなのだろう。
マッキンゼー社が2009年に行なった調査によれば、中国人富裕層(世帯年収25万元以上)は08年で160万世帯。
しかも、毎年約16%の勢いでその数は増えており、2015年には400万世帯に達し、米国、日本、英国に次いで世界で4番目に富裕層世帯が多い国になると言われている。
また、銀座や秋葉原に繰り出し、ブランド商品や家電製品を数10万円単位で購入する中国人観光客の姿を見ると、「やはり狙いは中国人富裕層だ」という結論に行きつくのだろう。
しかし実際には、中国人富裕層に対してモノやサービスを売るということは、そう簡単なことではない。
中国人富裕層は、価値と価格の
バランスをシビアに評価
確かに中国人富裕層は、高価格の商品・サービスを購入する経済力がある。しかしその経済力を、プレミアム価格の日本の商品・サービスを買うことに使ってくれるかどうかとなると、話は別だ。
中国人富裕層は、世界中から集まってくる一流の商品やサービスに触れる機会がある。海外旅行にもよく行っており、目が肥えている。そんな中国人富裕層は、日本企業が想像する以上に、シビアに商品やサービスの価値と価格を評価する。
つまり、日本の商品やサービスの提供価値と価格のバランスが、他の選択肢と比べて明らか勝っていない限り、中国人富裕層には、購入してもらえない。
たとえば、最近よく話を聞く中国人富裕層対象のメディカルツアー。日本の観光旅行と、日本の病院で受けるがん検診PET(ポジトロン断層法検査)をセットにしたプレミアムツアーだ。
中国でもPETを導入している病院はあるうえに、中国の病院であれば中国人医師が中国語で対応してくれる。それなら、なぜわざわざ時間とカネを余分に使ってまで、中国でもできることを日本でやる必然性があるのだろうか。