「全社員参加の政策勉強会より、運動会が優先です。運動会にポーンと行って、終わったら、勉強会にピーンと戻ってくればいい。家庭がいちばん」

「かばん持ち」をした社長の中には、家庭不和や離婚危機を抱えている人もいる。そんなときは私が間に入って、家庭内のこじれた糸を解きほぐすことがあります。

 X社長は、かつては家庭を顧みない社長でした。ふつう、バレンタインデーにもらうのは、チョコレートです。

 でも、X社長が奥さんから贈られたのは、思いもよらないものでした。

「朝、突然、カミさんが会社にやってきて、私のスーツを20着、置いていったんです。『もう帰ってこなくていいから!』って」(X社長)

 私は、X社長の奥さんに、こう言った。

「Xさんはまだ甘いから、今はあきらめてください。でも、私が必ず更生させますから。あなたたちが別れるのは自由ですけども、傷つくのは子どもです」

 そして私はX社長に、「午前0時までに家に帰らなければ、カミさんに1万円支払う」ことを約束させました(わが家にも同じ罰金制度があります)。
その後、夫婦の関係はよくなり、今は本当に夫婦仲がいい。

 株式会社インディオ富山(自動車販売/富山県)の岩崎孝社長も、一時期、奥さんともめていましたが、だいたいの事情を聞いたあとで、「定期的に奥さんと食事に行きなさい」と助言しました。

 私だって毎週日曜日は、わが家の天皇陛下(妻)と食事に出かけています。出張が多い岩崎社長がそれくらいの家族サービスをするのは、当然のことです。

 株式会社ダスキン山口(山口県)の岩本恭子社長はこう言っています。
「取締役だった主人に『おまえにはついていけない』と言われたことがあります。もし、小山さんのアドバイスがなかったら、自分を変えられなかったかもしれません。社長として、『会社をつぶしてはいけない』という義務感に押しつぶされそうになっていた私には、余裕がなかった。そのことで主人を苦しめていたのでしょう。小山さんが『肩肘を張る必要はない。困難なことがあっても、前向きに解決策を考えればいい』と言ってくださって、気がラクになりましたね。今では、主人も快く力を貸してくれます」

 家族仲を健全に保てないと、仕事のパフォーマンスが下がってしまいます。
そのためには、家族を犠牲にしないことです。家族とすごすコミュニケーションの時間を持つことが大切です。1週間に一度でいいので、家族のための時間を取りましょう。

家族に支えられているからこそ、充実した仕事ができるのです。