必要不可欠な協調体制の構築
政治の内向き志向で不安を拭えず

 足元の世界経済の状況を概括すると、過去約20年間にできた三つのバブルの影響もあり、全般的に供給能力が需要を上回るデフレギャップが発生している。

 例えば、わが国は長く続いたデフレから完全に脱却することができず、中国では鉄鋼やセメントなど在来産業分野で生産能力の過剰感が高まっている。欧州でも、デフレ圧力の高まりから消費者物価が低迷気味に推移している。

 それに対し主要国は、積極的な金融緩和を実施して景気刺激を図っているものの、期待されたほどの効果が出ていない状況だ。今後、世界経済を下支えするために最も重要なポイントは、主要国が結束して世界的な協調体制を作ることができるか否かだ。

 世界経済のグローバル化が進むと、一つの国にとってベストの政策が、世界レベルでの有効策になるとは限らない。特定の国が景気対策を打っても、他の国がそれを打ち消すような政策運営を行うと、全体としての効果は相殺されてしまうからだ。

 そうした政策の協調体制を作ることは口で言うほど容易なことではない。協調体制下で実施する政策が、短期的に特定の国に痛みの効果をもたらすこともあり得る。そういう状況でも、協調体制を維持することは鍵になる。

 痛みを伴う政策を実施するためには、政治が国民に対して理解を得なければならない。それこそ、政治のリーダーシップの真骨頂ともいうべき部分だ。

 しかし、最近の主要国の政治を見ていると、どうしても心配になってしまう。米国の共和党のトランプ氏の言動は、まさに内向き=自国利益至上主義の様相だ。6月の英国の国民投票でEU離脱派が多数となる場合には、そうした内向きの政治がさらに勢いを増すかもしれない。

 主要国の政治機能の内向き志向が強まると、世界の協調体制を作ることは難しくなるだろう。そうなると、世界的な供給能力過剰の状態を解消するためには、企業が淘汰されたり、自発的に設備を廃棄したりすることを待たざるを得ない。それには長い時間がかかる。そう考えると、世界経済の先行きにあまり楽観的になれない。