単純なくり返しの回数で
技術が向上

 一足飛びに背伸びさせても、結果は出ません。

単純なくり返しの回数で技術は向上できるのです。

 道具を正しく持てる、身体を正しく動かせるというのは、道具や身体の機能を十二分に活用しながら、ムダのない筋肉の動きができている、ということです。

 赤ちゃんのころを思い出してください。
 目の動きに合わせて首がやっと動き、頼りなく危なっかしくて、抱くにも頭を支えましたよね。

久保田 競
(Kisou Kubota)
1932年生まれ。医学博士、京都大学名誉教授。世界で最も権威がある脳の学会「米国神経科学会」で行った研究発表は日本人最多の100点以上にのぼり、現代日本において「脳、特に前頭前野の構造・機能」研究の権威。2011年、瑞宝中綬章受章。『ランニングと脳』『天才脳をつくる0歳教育』『あなたの脳が9割変わる!超「朝活」法』など著書多数。

 首はすわったけど、背骨は丸くなってグラグラ。安定したかと思うと、すぐ反り身になって、思わず落としそうになる。細心の注意を払って接していたはずです。

 授乳したり、お風呂に入れたり、抱いたりすることで、赤ちゃんの筋肉はきたえられ、しっかり首がすわってきます。

 オムツ替えのときにも、黙々と作業するより、語りかけたり、手足をなでてあげたりするだけでも、手足の動きがよくなるものです。

 同様に、道具使いも、ちょっとした親のひと言があるのとないのとでは、ずいぶん違ってきます。

 たとえば、ハサミを使う場合、親指とほかの3本の指を入れる穴の大きさが違うものや、少し重いものを用意します。

「こっちの小さいほうに親指、こっちの大きいほうに人差し指も中指も薬指も入れて、小指も入るかな? 入れば4本の指を入れて、持てるかな?」

 と言って手首を支えてあげながら、

「手を広げるとハサミが開くよ」
「ゆっくり、広げてごらん」
「閉めてごらん、さっと早く閉めてごらん」
 と言います。
 少し重ければ、ハサミを広げるときに助けてあげましょう。

 閉じるときは、手助けしなくてもすばやく閉じられるように練習します。

 こうすると、持った道具に合う筋肉の動かし方を覚えられます。
 その後に紙を切らせますが、成功してもらうために紙も選びます。
 力をコントロールできるまでは、どんなに刃物がよくても、紙がやわらかすぎても、硬すぎても切れません。

 また、「直線切り」は、親指を主に動かして切ります。
 巧みに小きざみに切るときは、肌を傷つけないように親指を固定して、ほかの指でうまく力をコントロールして動かします。