NHK大河ドラマ「真田丸」がビジネスパーソンの関心を集めている。それは、真田丸の登場人物が、人材開発に有効な「状況対応型リーダーシップ」に沿って描かれているからだ。「真田丸」の登場人物を見ながら、企業でのリーダーシップのあり方を考えてみよう。
成長の段階が異なる信繁と信幸では
必要とする上司のあり方も変わる
NHK大河ドラマ「真田丸」が好評だ。特に筆者の周りでは、ビジネスパーソンたちから支持を集めているように見える。その理由を考えると、登場人物のキャラクターが、状況対応型リーダーシップに応じた象徴的な描かれ方をしているからのように思えてならない。
ここで言う状況型リーダーシップとは、『1分間マネジャー』シリーズの著者であるケン・ブランチャード氏などが開発したメソッド「Situational LeadershipII」である。ダイヤモンド・オンラインの読者にはご存じの方も多いと思うが、あえて私なりに簡略に整理すると、個人の人材開発レベルに応じて、リーダーシップスタイルを変えていくフレームワークである。
当然ながら、人材開発はどの人にも画一的に同じ方法を取るのでは、意味がない。また、同じ人であっても、本人の成長度合いに応じて、対応を変えて行く必要がある。下の図にあるように、人材開発の時間の経過に応じて、社員の技能は高まっていく。一方で、社員の人材開発トレーニングへの意欲は、当初は高いが、その後低減し変化し、仕上げの段階で再び高まることが一般的だ。
こうした人材開発レベルに応じて、求められるリーダーシップスタイルも変わる。具体的には、下の図にあるように、管理型(強い管理)、指導型(強い管理と強い支援)、支援型(強い支援)、放任型の4パターンに区分される。
「真田丸」のキャラクターでは、堺雅人演じる主人公真田信繁は、D1からD2、D3の人材開発レベルを推移している。当初の意欲満々の姿から、姉である「まつ」を守れなかった挫折や、妻である「梅」を失う不幸に直面しながら、意欲を低減させたり、変化させたりしている状況だ。そんな信繁に対する父・昌幸や叔父・信尹のリーダーシップスタイルは、S3の支援型の段階にあり、強い支援をしているが、管理の度合いは弱い。
一方、大泉洋演じる真田信幸は現時点では、人材開発段階は、D1からD2だ。求められるリーダーシップスタイルとしては、S1管理型から、S2の指導型の段階にあり、ドラマ中でも強い管理と強い支援を受けているように思える。
この人材開発段階や、それに対応するリーダーシップスタイルを見極められるようになることは、重要なことだし、おもしろい。しかし、おもしろいだけに、「AさんはD1だ」「BさんはD2だ」と、見極めるだけで満足してしまう研修参加者が多いことも事実だ。
目的は、人材開発を促進するということなので、人材開発段階に応じて、リーダーシップスタイルを発揮できるようになるためには、管理型だ、指導型だ、支援型だ、放任型だと型を示すだけでは用をなさない。リーダーは型の見極めとともに、各メンバーの特性を見極めたコミュニケーションの仕方を身に付けることが不可欠なのだ。