公的年金の受給額そのものも、
実質的な目減りが進む

公的年金の受給額そのものも、実質的な目減りが進む。

年金受給額は物価や賃金に応じて決まる仕組みになっており、もともとは物価と賃金の上昇率のうち低いほうに合わせることになっている。しかし現在は、将来世代の負担が重くなりすぎるのを防ぐための制度として「マクロ経済スライド」が導入されている。

これは、物価や賃金の上昇率から1%程度差し引いて年金額を調整するというもので、今後30年ほど続けられる予定となっている。デフレ状況下にあった2010年度から2013年度の間は、年金受給額は毎年、引き下げられていた。

2014年は物価が2.7%、賃金が2.3%上昇したので、もともとの仕組みに従うなら2015年度の年金額は2.3%増額されていたはずだった。

しかし「マクロ経済スライド」によりマイナス0.9%、さらにこれまで物価下落時にスライドしなかったときの調整(払いすぎた年金)の分としてマイナス0.5%、合計1.4%が差し引かれたため、年金額は0.9%増に留まった。つまり、年金額は額面で0.9%増えたのだが、2.7%の物価上昇と比べれば実質1.8%目減りしたことになる。
 


2015年度のケースから分かるように、今後も「マクロ経済スライド」により、物価が上がれば年金の実質的な目減りは進んでいく。少子高齢化が進み社会保障費が増大していることを鑑みれば、増税や社会保険料の負担増という流れも続くと考えるのが自然だろう。