東京・浅草から見える観光名所となったアサヒ本社。外資が入れば「本社ビルの売却」も
Photo by Hidekazu Izumi

「今回の買収、シナジー(相乗効果)があるようには思えないんだよな」。ある投資銀行の幹部は、首をかしげながらこう呟いた。

「今回の買収」とは、アサヒグループホールディングスの案件だ。4月19日、アサヒは26億ユーロ(3200億円)で、伊ペローニ、蘭グロールシュなど欧州のビール会社4社の買収契約を締結した。

 きっかけは昨年秋だった。ビール最大手のベルギー、アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)と第2位の英SABミラーが統合で合意。巨人2社の合併に伴い、米国や中国などの特定地域で独占禁止法に抵触するため、事業売却が始まったのだ。

 アサヒの欧州4社買収は一連の事業売却によって実現したもので、久方ぶりの大型買収にビール業界は沸き立った。一方で、冒頭のコメントのように、懐疑的な見方も少なくない。「買収した4社の販路で『スーパードライ』を売り伸ばす」(アサヒ首脳)という戦略に疑問符が付くからだ。