営業利益の累計額にも物足りなさが残る。前中期経営計画では、15年度までの5年間で、年平均2000億円強の営業利益を上げるはずだった。ところが終わってみれば、円高、原油高、原料高などの憂き目に遭って、年平均1550億円強である。計画に対し、累計2000億円以上ショートする結果となった。

 投資は計画通り行ったため、利益がショートした分、自己資本が積み上がらず、財務体質が改善しなかった。借入金の大きさを示す負債資本倍率(ネットD/Eレシオ)は、計画の0.8倍を達成できそうもない(図(2))。

 財務を安定させ、持続的に成長するためにも、今年度からスタートした新中計では、規模の拡大でそろえた“手駒”でいかに効率的に収益を稼ぐかが要となる。効率性の指標であるROE(自己資本利益率)の目標は、最終年度(20年度)に11%(日本基準)。14年度は6.4%であり、最近の実績からするとやや強気である(図(3))。

 手っ取り早く達成したければ、海外の化学メジャーよろしく、思い切った選択と集中をする手がある。価格競争に陥りがちな汎用化学品で大規模なリストラを断行するなど、やりようはあるはずだ。

 しかし、三菱ケミカルはこれを否定する。今の4兆円前後という売り上げ規模は、安定的に成長する上で不可欠と考えるからだ。多角化で手にした事業範囲の広さを生かし、事業のリスクを分散させながら安定的に収益を稼ぐからこそ、コンスタントに成長投資ができるのだと主張する。

多角化を生かした付加価値品創出が収益力改善の鍵

 では、どうするのか。医薬品メーカーの田辺三菱製薬と再生医療領域などを手掛ける生命科学インスティテュートとでタッグを組むなど、事業会社間の連携を強めていくのはもちろんだ。加えて、化学系の事業会社3社は17年4月に統合し、事業会社間の壁もろとも打ち壊す。

「今はシェアが3位、4位では生き残れない。グローバルなマーケットでトップシェアを握れる製品をどう育て上げ、増やしていくか」。こう小酒井最高財務責任者が語る課題を解決するには、技術力、ソリューション力など、持てるノウハウを最大限に活用していく仕組みが必要なのだ。

 事業ユニットについても、ユニット単位を大きくくくり直して、商品同士のシナジーを高めていく。商品の縮小・撤退を含め、ユニット内のポートフォリオも常に見直していく考えだ。

 事業分野別に営業利益を見ると、汎用化学品を含む素材分野は景気に左右されて時に大損失を出してきた(図(4))。単に素材を単品で売るのではなく、数種類の素材を組み合わせたりすることで、市況や新興勢に振り回されない付加価値商品をどれだけ生み出せるか。それもまた、安定的かつ効率的な収益力を持てるか否かの鍵となる。

 目指すは複合企業であることのメリットが際立つコングロマリットプレミアムの実現だ。