自国通貨が強含みになることは、輸入部門にとっては大きなメリットになる。しかし、輸出部門の企業などにとっては重大な逆風となる。わが国経済の中心が家電や自動車など輸出分野だったことを考えると、これまで多くの企業が円高に苦しめられてきた。

 特に、2011年に円の最高値を付けた当時を思い返すと、国内経済の低迷に加えて、円高による輸出の採算悪化等は、わが国の主力企業に重大な悪影響をもたらしたことは記憶に新しい。

過去の例をみても
長くは続かないドル高・円安

 2011年秋に円の最高値を付けて以降、ドルは米国経済の回復に呼応して徐々に強含みに転換した。そうしたドル高・円安傾向を加速したのが、アベノミクスの一環として積極的な金融緩和措置を繰り出した日銀の政策だった。

 その結果、2015年まで円安傾向が続き、それがトヨタを始めわが国有力企業の収益状況を大きく改善させた。豊田社長が、「円安の追い風参考記録」と称した現象だった。

 しかし、過去の例を見ても、ドル高・円安は長く続くことはない。73年1月の完全変動相場制への移行以後、長くても4年以上、ドル高・円安が続いたケースはほとんどない。今回も、2015年秋口以降、円安傾向に微妙な変化が見られ始めた。

 そうした為替の変動は、豊田社長ならずとも頭の中にはあったはずだ。その為、多くの企業経営者は、恐らく、「ドル高・円安の潮目の変化という、来るものが来た」という意識を持っているはずだ。

円高が進行したら
企業はいかにして生き残るか

 問題は、仮にこれから円高が進んだ時、わが国企業がいかにして生き残っていくかだ。かつて、大幅な円高の波が来たことで経営が困窮した経験を踏まえて、多くの企業はそれぞれの対策を考えているはずだ。

 世界市場を目指す企業は、恐らく、生産拠点に一部あるいは多くを海外に移転していると見られる。それらの企業は、海外で生産した製品を海外市場で販売するビジネスモデルがある。為替変動の影響を大きく受けることは少ないだろう。

 また、他の企業の中には、外貨の債権・債務のマッチングや相殺=ネッティングを拡充しているところも多いはずだ。そうした工夫によって、わが国企業は身を守る手段として為替変動に対する耐性を高めている。

 そうした防衛型の工夫に加えて、企業にとってさらに必要なことは製品の競争力を高めることだ。その為には、新しい製品や技術などのイノベーションを実現することだ。そうしたイノベーションを現実化することで、仮に為替が変動しても、高い競争力を盾に収益力を維持することはできるはずだ。

 今回のトヨタの決算発表の席で豊田社長は、これまで以上に研究開発に注力し、従来の自動車の枠を超えるような新技術の開発に注力することを明言した。それこそが、為替変動のハードルを乗り越える究極の方法と言える。

 わが国の多くの企業は、2011年の1ドル=75円台の超円高局面を乗り越えてきた。それを考えると、今後、さらに円高が進んだとしても、そのハードルを乗り越える手法は必ずあるはずだ。