爆発的な広がりを見せる企業のTwitter(ツイッター)導入。多くの企業がアカウントを設け、フォロワー数を競っているが、運用方法や効果測定はいまだ試行錯誤の段階だ。ダイヤモンド社はさる8月4日、マーケティング支援を行うターゲットメディアと共同で「顧客が動くTwitter運営術」セミナーを開催。Twitterをはじめとしたソーシャルメディアに詳しい徳力基彦氏のほか、いち早くプロモーションを成功させた企業をゲストに、Twitter運営のポイントを語ってもらった。
ソーシャルメディアマーケティングのカギは「会話」にある
―アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 代表取締役 徳力基彦氏
ブログやTwitter等を使ったソーシャルメディアマーケティングについては、いくつかの誤解があるようです。「ネットは第5のマスメディア」「短期間で口コミを拡げられる」「炎上リスクがある」など、これらは全部間違い。ネットは、マスメディアとは性格が異なり、不特定多数の認知獲得は苦手です。
また、ブログなどにお金を払って記事を書いてもらうことは、「やらせ」ととられてユーザーの心証を悪化させます。そして、そもそもソーシャルメディアマーケティングをしていなくても、利用者の期待を裏切れば炎上は起こります。過度に炎上を恐れる必要はないのです。
従来のマスマーケティングとは全く異なる、ソーシャルメディアマーケティング。その特徴は、「特定の利用者との双方向コミュニケーションができる」「中長期での特定利用者との関係構築が得意」「利用者の本音を聞くことができる」「口コミが利用者によって想像以上に拡がることがある」といった点にあります。
よい例が、ユニリーバが展開した「Dove」の「pro age」キャンペーンです。このキャンペーンではいわゆるYouTubeを活用した「バイラルビデオ」がキャンペーンの一つの中心になっていますが、ポイントはそこではありません。「美しさ」について利用者同士が議論するサイト、テレビCM、雑誌広告、屋外広告など、多角的に展開した点にあります。
その結果、約6万のブログでこの話題が取り上げられるなど口コミが大量に発生し、キャンペーンは開始後3週間で1年間の目標収入額に達するほど成果があったそうです。マスメディアとソーシャルメディアを組み合わせたマーケティングの成功事例といえます。 マスメディアだけ、ソーシャルメディアだけではなく、それらを組み合わせて戦略的に活用することが重要ということです。
なお、利用者との対話を通じてファン獲得を狙うカンバセーショナルマーケティングの戦略は、5段階に分かれると考えています。利用者の声に耳を傾ける「1.傾聴」から、情報発信する「2.会話」、口コミを拡げる「3.活性化」、利用者間の対話を促す「4.支援」、ファンと一緒に盛り上げる「5.統合」です(参考:『グランズウェル ソーシャルテクノロジーによる企業戦略』翔泳社)。
Twitterは特に1~3の戦略に活用するのがよいのではないかと考えています。Twitterの発言から利用者の声を拾ったり、公式Twitterアカウントを開設して情報発信したりする使い方が考えられます。すぐにできるのは、Twitter上の自社商品についての発言をTwitter Searchなどで検索してみることです。その発言を商品・サービスに活かすこともできますし、利用者と直接コミュニケーションをとり、直接サポートすることもできます。
まずは、担当者が個人アカウントを作ってTwitterの仕組みに慣れることから始めましょう。慣れたところで、企業としての公式アカウント開設し、情報発信はもちろん、他の利用者と対話してみましょう。さらに運用に慣れてきたら、アンケートやクイズなどの参加型企画を実施してみるのもいいでしょう。まとめサイトを作って、利用者の声を可視化するのも効果的です。
手軽に始められるTwitterですが、効果が出るまでには時間がかかります。役立つ情報を発信したり、他の利用者に積極的に話しかけたり、自社サイトやブログで紹介するなどして、地道にフォロワー数を増やしていくしかありません。大事なのは、Twitterをユーザーとの会話の場ととらえることだと思います。