仕事における男女の違いはあるか
楠木 この本の中で一貫して批判をしてるのは、男女のカテゴリーにこだわりすぎ、という話。男女の差なんて大した意味ないんじゃないのかと述べているのですが、その辺についてはどう思われますか?
佐藤 僕は基本的には、アラートとして男女比などの数字を見るのは良いと思うんです。ひょっとしたら組織内でバランスが悪いかもというのを発見するために、数字はあっていいと思うんですよ。
たとえば管理職の男女比が、あまりに違う場合、一番困ることは何なのかを考えなければいけない。それは良いものを良いというふうに認められてない、評価できてない、探せてないっていうことが、組織の中で起きていると思うんです。女性であるということに、バイアスかかっているのか、機会を与えられていないのか、という原因を探る指標として使うのはよいと思っています。この数字は国籍でもいいんですけどね。
楠木 普通に考えれば、男女比が管理職だろうが、働く人だろうが、人口構成比とイコールになっているのが自然というか、普通だと思うんですよ。それから外れているということは、何かのバイアスがかかっていることは間違いない。だからもっと女性が活躍するのは当然の話で、まったく賛成です。
ただ、僕は、このところ男女というカテゴリーを意識しすぎだと思うんですよね。そもそも男女って違うのかなと思うんですけど。できる奴とできない奴がいるだけ。
大森 そんなに違わないと思います。
佐藤 基本的に違いはないという認識です。ただし、傾向はあると思っていて。男性は出世を望みやすい。
楠木 ああ、なるほど。「マネジャー編」でもその話はでましたね。
佐藤 はい。だから僕、女性管理職何%っていうのが、違うかもと思っているのは、まさにそこで。出世を望まない女性でも、優秀な人ってやっぱりいるんですね。たとえばですが、出世を望む男性だったら、社長に耳の痛い話が言えないかもしれない。けれどもうちの場合は、藤田がいたとしても、女性だったら、ズケズケ言うんです。
大森 わかりますね(笑)
佐藤 僕はこれが正しいと思うんです。普通に平気で上司に言える女性のほうが、本質的におもしろいサービスを生んだりするんですよね。だから、男女の傾向はあるにせよ、でも、男性のよさ、女性のよさっていうのも、やっぱり活かして配置するほうが、会社としては大事だと思います。
楠木 なるほどね。
宮島 私も根本的な能力差はないと思っています。ただ、実際問題としてライフイベントなどのオプションが、現時点での日本の一般的な姿で言うと、女性のほうが多く取れます。男性のほうが、よりシンプルだっていうのが、たぶん、一般的にはまだあると思うので。
楠木 なるほどね。それはまあ、そうでしょうね。
宮島 それを考えた時に、のちのちの自分の生き方を考えた時に、それが職場での行動というものに表れるのは、さすがに否定できないのではないかと思っています。
楠木 うん、そうでしょうね。
僕の知り合いで、子どもを連れて、海外勤務をしている女性がいるんですよ。旦那さんのほうが、たぶん主夫に向いているみたいで、逆転している。僕は、そういった形態が自然ともっと出てくるはずだと思います。
うちもそうなんですよ。うちもはじめは、妻が、「四の五の言わないで、好きなことをやっていろと。15年間面倒見てやるから心配するなと。そのかわり途中でガタガタ言うなよ、自分が決めたことだから」って言ってくれたんですよね。もう、まったく、食べる心配しないで好きなようにやらせてもらいました。そのかわり、お弁当を僕がつくったりして。すごく快適でしたよね。
大森 得意なほうが、得意なことをやればいいと思います。
楠木 そうそう。だから夫婦も、好き嫌いで、それぞれいろいろと、あり様があるんですよね。夫婦の問題なのに、なぜか中には、「まだ女は」って言う人も、おじちゃまもいれば、逆に、女性も働かなきゃダメだ、みたいなのもいろいろいますよね。
大森 人それぞれ、十人十色で良さがある。一人ひとり、本来の自分を無理に変えなくていいのだと思います。
宮島 逆に、まだ、男の派遣社員ってちょっとっていうふうに、見られがちな部分って、やっぱりあるじゃないですか。それも男の人は窮屈だなと思って。
楠木 そういうものですか。
宮島 好きでやってるんだったら、べつにいいじゃんって。