「最後は何とか及第点で締めくくれたのではないか」。2015年度の決算発表で、NTTドコモの加藤薰社長はそう言って胸を張った。

 携帯電話大手3社はいずれも、スマートフォンの普及でデータ通信料収入が伸びたことで、増収増益の決算となった。中でもドコモにとって今回の決算は特段に意義深いものだった。今年6月での退任が決まっている加藤社長にとって最後の決算であり、12年6月の就任から4期目で初となる「増収増益」を成し遂げたからだ。

吉澤次期社長(右)と固い握手を交わす加藤社長。吉澤氏について加藤社長は「経験豊富で右に出る者がいない」と太鼓判を押す Photo by Shinya Kitahama

 ドコモの15年度決算は、売上高に当たる営業収益が前期比3.3%増の4兆5271億円。営業利益は同22.5%増の7830億円。3期連続の減益からのV字回復を果たした。

 けん引役となったのは、非通信事業である「スマートライフ領域」の成長だ。営業利益は前期比約2.4倍の787億円(一部事業の減損を除く)と全体のおよそ1割を占める。dTVやdマガジンなどのコンテンツサービスに加え、dカードやdポイントといった金融・決済サービスの拡大が成長をけん引した。

 一方、課題だった通信事業も改善が進んだ。14年6月に導入した通話定額プランは当初、最もデータ通信料の安いプランにユーザーが殺到したため、14年度は約1000億円の減益要因となった。だがデータ通信量の増加に伴い、利用者の9割が標準以上のプランに移行。15年度の通信事業の営業利益は728億円の増益となった。