「アウト」の事業者はどうなっている?

 では、東京都が付けた×印は、事業者から無視され、何の効果もないのだろうか。

 現在、東京都が3月末時点で受理している有料老人ホームは全部で679施設。これが都内で運営されている有料老人ホームの総数である。そのうち×印は310施設、46%にも上る。全体の半分近く、多いと思われるが東京都の見方は違う。

 東京都福祉保健局施設支援課の担当者はこの数字を「都の施策によってかなりの成果が上っている」と胸を張る。というのも、3年前の2013年3月時点では、585の全施設のうち×印は70%にも達していた。それが、年々下がってきて24ポイントも減ったからだ。

 入居金そのものを設けない有料老人ホームも増えている。月払い費用だけでの運営なので初期償却とは無縁だ。月払い方式の施設は、13年3月末には全体の17%だったが、この3月末には27%に上昇している。

 こうして、「入居金離れ」が加速している事実から、東京都が「行政指導の効果が大きい」と自画自賛するのも頷ける。東京都のほか、全国的にも月払い方式を設ける事業者が急速に増え、入居金との併用型が多数派になりつつある。

 とはいうものの、×印を付けてそのまま放って置くのもおかしな「行政指導」と言わざるを得ない。

 ×印を付けて利用者に警告を発しているにもかかわらず、翌年にまた同じ企業が同じ施設ブランドで運営の届けを持ってくる。それを、また東京都は受理してしまう。4年も繰り返されてきた。

 ×印はいわば赤信号。自治体から指摘を受けた事業者は、改善するなり、次回は青信号に直して届けを出すのが道理ではないだろうか。改正法には「改善に必要な措置を採るべきと命ずることができる」と定められている。

 あるいは、赤信号のままなら都は受理しない手もある。かつて、廊下幅や個室要件などガイドライン基準に合わない施設を「類似施設」と呼び、都道府県が有料老人ホームとして受理しない時代があった。今の東京都の対応は中途半端、腰が引けていると言わざるを得ない。