二つの算式を同時に考えることが大事

 いま挙げた五つの例は、「損益」と「キャッシュフロー(現金収支)」は違う、ということと同じ意味を持っています。「損益」とは、売上高から売上原価、販管費、その他の損益(営業外損益や特別損益)を差し引いた結果です。「CF(キャッシュフロー)」は、現金の入出金の結果です。これを単純化すると次のような式になります。

そもそも「利益」と「現金」はどう違うのか?

 利益と現金は違うし、同じように損益とCFも違います。そのうえで、違うからこそ二つの算式を同時に考えて経営しなくてはいけない、ということを理解することが何より大事なのです。

 売上高をいかに上げ、売上原価や販管費をいかに下げ、利益をいかに上げるか。現金収入をいかに多く早くし、現金支出をいかに少なく遅くし、現金をいかに多く貯めるか。その二つのことを同時に考えながら行動しなくてはいけません。

 利益が上がっていても現金が減る一方だったら、「黒字倒産」もありえるからです。

安本隆晴(やすもと・たかはる)
公認会計士・税理士。株式上場準備コンサルタント。
1954年静岡生まれ。1976年早稲田大学商学部卒業後、朝日監査法人(現・あずさ監査法人)などを経て、安本公認会計士事務所を設立。1990年(株)ファーストリテイリング(旧・小郡商事)の柳井正社長と出会い、以降、株式上場準備コンサルタント・監査役として、同社の成長を会計面から支えてきた。現在、アスクル(株)、(株)リンク・セオリー・ジャパン、(株)UBICの監査役でもある。2013年3月まで6年間にわたり中央大学専門職大学院国際会計研究科特任教授を務めた。2014年5月より若手経営者向けの勉強会「未来経営塾」を開講している。

(本連載は毎週金曜日更新。次回は6月3日(金)公開予定です)